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05日目 ~登山、古書、暇潰し~




「ふゎ~い、よっこらせっくす」



 今日も人前で口を出すのもはばかれる一言から一日が始まる。今日はいつにもまして早い朝だ。手早く身支度を済ませると、階下へ向かう。今日は山登りの日だ。ウチの日ごろの行いは良い方なので、きっと良い天気に恵まれていることだろう。




 ・・・・・。雨は昨日の夜からずっと降り続いていたようだ。なぜだ! ウチの日ごろの行いから見れば、今朝は晴れの気分だったのに。……そうか、雨で思い出したぞ。あの真珠取り名人が雨乞いでもしたんだろう。まったく、ちょっと面と向かって馬鹿にしてやっただけなのに、ここまですることぁないじゃないか。





 一人で勝手にぶつぶつ文句を言いながら、Chorrol(コロル)の北門へと向かう。朝早くの雨の中。すれ違う人やガードの姿も見えやしない。静寂に包まれたChorrol(コロル)の街を、一人ひっそりと外に向かう。





 山登りなだけあって、道のりは全て上り坂。ずっと見上げるような格好で進むわけだ。山の中だから野生動物はもちろん、凶悪な逃走犯などにも気をつけねばなるまい。逃走犯は追っ手のガードから逃れるため、山中奥深くに潜むというからな。

 気づけば雨も止んでいた。やはり日ごろの行いのおかげだな。徐々に雲間から日が差してきたので、地図で目的地を確認する。






「Earana(イラーナ)の話だと、Cloud Top(雲天)は地図のこのあたりだって話だけど」



 地図に記載されていない山道の先に、Cloud Top(雲天)と言われる古い遺跡がある。その遺跡の付近に、目的の本……『Fingers of the Mountain(フィンガー・オブ・ザ・マウンテン)』があるのだとか。

 昨日のEarana(イラーナ)の話と、Teekeeus(ティーキウス)たちの話を比較すると、こうだ。

Teekeeus(ティーキウス)とEarana(イラーナ)はもともとThe Arcane University(魔術大学)に通っていた。
Earana(イラーナ)は大学でとある調査を行っていたグループの一員で、そのグループのリーダーがTeekeeus(ティーキウス)。

Earana(イラーナ)はたびたびルール破りをしていた。
Teekeeus(ティーキウス)が告げ口して、Earana(イラーナ)はMages Guild(メイジギルド)から除名処分された。
Earana(イラーナ)は、上司であるTeekeeus(ティーキウス)の許可を得ず、自分勝手に行動していたので、役員会に諮られた結果、ギルドを除籍させられた。

Earana(イラーナ)がTeekeeus(ティーキウス)のある事ない事ウワサを立てて、Teekeeus(ティーキウス)もThe Arcane University(魔術大学)で就いていた職からChorrol(コロル)の支部長に降格させられた。
Teekeeus(ティーキウス)がChorrol(コロル)に地方送りにされたのは、彼がEarana(イラーナ)の上司であり、彼女の問題行動を制することが出来なかった事に対する引責処分。

最近、Earana(イラーナ)がChorrol(コロル)にやってきた。すれ違ったときにはすごい形相だった。
Earana(イラーナ)はChorrol(コロル)で何かを探しているらしい。
Earana(イラーナ)はギルドを除籍となった今でも独自に調査を行っていて、それの鍵となる本―『Fingers of the Mountain(フィンガー・オブ・ザ・マウンテン)』―がChorrol(コロル)方面にあることを突き止めた。

 う~む、正直ウチは推薦状さえもらえりゃ、事の背景が何だろうと構いやしないんだけどね。






「お、ちゃんと整備された登山道なんだな」



 左手には転落防止のための柵。急な上り坂には丸太組みの階段が据え付けられている。地図には記載のない道だが、こうやって手入れされているところを見ると、人通りのあるところなのかな。

 柵の下を覗いてみると、オオカミの群れと目が合った……しまった、余計なことしたな。Skeleton(スケルトン)を囮にして状況判断するか。






「おうおう、オオカミ3匹の同時攻撃かよ」



 Imperial City(インペリアル・シティ)で見たオオカミに比べると小ぶりだが、こちらは群れを成すタイプらしい。坂の下には更に何匹か居る。囮で召喚したSkeleton(スケルトン)が集中攻撃を受けてボロボロだ。こりゃ本気でやらんとな。昨日、Weynon Priory(ウェイノン修道院)で覚えたLightning Blast(ライトニング・ブラスト)の餌食にしてくれるわ。






「そぉい!」



 ウチの指先から放たれた雷でオオカミの1匹が吹き飛んだ。おお、こりゃかっけぇな。そいや、ちゅどーん。そいや、ちゅどーん。面白ぇ面白ぇ、そいや、すかっ……。あれ? またMagicka(マジカ)切れ? 燃費悪いな、この魔法。仕方なく地味で低燃費なDrain Health(ドレイン:体力)に切り替える。





 死屍累々という表現がピタリと当てはまる光景だな、こりゃ。どうやらこのあたりのオオカミは、1匹ごとは弱いが群れを成して襲ってくるタイプのようだ。すばしっこい動きで波状攻撃してくるが、確実に1匹ずつ仕留めていけばどうってことない相手だな。何、腕に歯形が付いてるって? 気にするな。





 谷に架かる大型のつり橋を渡る。柵や丸太階段に比べると、こちらはずいぶん大掛かりな構造物になるな。それだけここを通る人が多いって事なんだろうか。その割には人っ子一人見かけないが。出会うのはオオカミぐらいだし……ほら、また来た。






「そぅりゃ!」







「はいもういっちょ!」




 ほら、今回は無傷だ。対処の仕方さえ分かればどうってことのない相手なんだ。余裕がなければコスト重視でDrain Health(ドレイン:体力)に頼りがちだが、心に余裕さえあれば見た目重視のLightning Blast(ライトニング・ブラスト)で仕留めていく。だって、その方がカッコいいじゃない?





 オオカミを片っ端から仕留めていくと、ようやく目的の場所らしきところにたどり着いた。崩れた城壁とアーチ状の門。地図を開いて確認するが、やはりここがCloud Top(雲天)で間違いないらしい。






「さて、Earana(イラーナ)はこのあたりに本があるって言っていたけど……ん?」



 丁度ウチの影になった部分に、黒い塊が転がっている。何かが焼けて焦げたように見えるが……燃えた木の枝? 何なのかな? 近くによって確認してみる。






「げ、こりゃ人の丸焦げ死体じゃん」



 良く見ると手の先がない。おそらくオオカミにでも食われたんだろう。しかしこんなところに丸焦げの死体か……雷でも落ちたかな? でも雷は高いところに優先的に落ちるよな。近くには背の高い木がたくさんあるが、そちらには雷が落ちた形跡は見られない。一体どうしたんだろうかね……。


「これだけ燃えずに残ってるが……あ、これかな」






 丸焦げ死体の下に隠れるように置いてあった一冊の本。うん、多分これが目的の本だろう。どうやらこの丸焦げ死体が持っていたようだが……何者かに襲われた? でも本だけ燃えずに残されたところを見ると、追いはぎや野盗の類じゃなさそうだし。






「ま、いっか。ウチには関係のないことだろう。目的のものは見つけたし、良い眺めだし」



 難しく考えても仕方がない。丸焦げ死体を見た後は、綺麗な風景でも見て心を洗おう。






「このつり橋からは、Chorrol(コロル)の街が一望できるのか」



 同じ道でも、行きと帰りじゃ風景がまったく異なるのも、山登りの醍醐味だな。帰り道はオオカミも退治した後だし。辺りの風景を眺めながらChorrol(コロル)まで戻ってきたが、朝早く出たおかげでまだ昼前だった。





 Earana(イラーナ)はまた同じところで世間話か……話し相手は昨日と同じ奴っぽいな。何を話しているんだろうか。まぁいい、丁度こちらに背を向けている間に、ばれない様にMages Guild(メイジギルド)に滑り込む。






「何か用か? Associate(準会員)」



 事の背景がどうであれ、自分の欲望に忠実に生きるのさ。それがウチにとって最も大事な、「議論の余地もない重要事項なのですぞ」と。はやく推薦状くれ。






「はい、これ」



 ウチは、二人が求めていた本をTeekeeus(ティーキウス)に差し出した。


「ああ、これだ。まさしくこの本だ。これで全てよし、と。あなたは自分がギルドにふさわしい人物だと示しましたな。私はそれに感動し、あなたが必要とする推薦を送ります」



 よし、これで一仕事終了だな。無事推薦ももらったことだし、これでウチはあの本と関わる必要性はまったくないわけだ。……わけなんだが、やはり気になる。


「ありがと。ねぇ、その本の持ち主、既に死んでいたんだけど何か知ってる?」

「さあ、知りませんがその人は盗人の類では? その罪ゆえ裁きの雷が落とされたと思いますぞ」

「なるほど。悪いことはできないもんだ」

「では私はこの本を安全に保管しなければならないので、失礼しますよ」






 Teekeeus(ティーキウス)は『Fingers of the Mountain(フィンガー・オブ・ザ・マウンテン)』を懐に入れると、宿舎にある自分の部屋へと向かっていった。

 裁きの雷……ね。ウチは一言も「焼け焦げた死体」とは言ってなかったのにねぇ。Teekeeus(ティーキウス)さんや、やっぱりアンタ何か知っていたんだろ? おそらくEarana(イラーナ)の目的も。彼女がギルドから除籍した後も独自で調査していたことも。『Fingers of the Mountain(フィンガー・オブ・ザ・マウンテン)』を探すためにChorrol(コロル)に来たことも全部。そしてアンタは、それを横取りすることを考えた。

 『Fingers of the Mountain(フィンガー・オブ・ザ・マウンテン)』。Ayleid(アイレイド)の魔法的な天候の制御に関わる本。ウチにはピンとこないが、研究者からすればかなりの価値のあるシロモノなのだろう。そしてその本を手にしたTeekeeus(ティーキウス)は、大学で高く評価される。もちろん昇進も夢じゃない。また大学に復帰することが出来るのだろう。さらに言えば、自分を地方送りにする要因となったEarana(イラーナ)に対する復讐も成されると。

 なるほど、たいした自分勝手な重要事項だことで。けど、あいにくウチはそういうのが大嫌いなんでね。





 3階の宿舎。Teekeeus(ティーキウス)はどうやら自分の部屋に『Fingers of the Mountain(フィンガー・オブ・ザ・マウンテン)』をしまったようだ。そして彼が部屋から出てくるのを見計らってすばやく身を隠し、気づかれぬうちに部屋の中に忍び込んだ。……だが。






「いらっしゃい。ギルドの仲間からの窃盗は停職扱いになるわよ?」



 なぜかTeekeeus(ティーキウス)の部屋に居たMei(メイ)。ウチの試みはあっけなく潰えた。しかもウチの目的はバレバレのようだ。Teekeeus(ティーキウス)がいない間に本をもらっていこうとしたんだが……待てよ、なんで鍵のかかっていたこの部屋にいるんだ? またちょっとカマかけてみるか。


「いやぁ知らんかったなぁ。まさか支部長が自室に愛人を引き入れていたなんてなぁ」

「な……違うわよ! 私はTeekeeus(ティーキウス)から本を借りていただけで……」

「へぇ。でもこの部屋、鍵がかかっていたんじゃないの? まさか特定の人に合鍵なんか渡さないよねぇ?」



 いやぁ、全部口からでまかせで適当なことを並べ立ててみただけだったんだがなぁ……。実はその通りだったようで、Mei(メイ)は思わず口ごもってしまったようだ。へ~、そうだったんだ。何かかえってショック……。


「……はぁ、わかったわよ。ここで起きたことはお互い誰にも喋らない。それで良いんでしょ?」

「おやおや、ウチは別に誰かに話そうなんて思ってなかったんだけどな~」



 何ともワザとらしく棒読みする。いやはや、話が早くて助かる。意外と何とかなるもんだな。それじゃ早速……。ベッド脇の宝箱に鍵もかけずに入っていた本を見つけた。無用心だなぁ。それじゃこの本はEarana(イラーナ)に渡してやるとして。


「そうそう、一つだけ聞いて良い?」

「・・・・・。何よ」

「あのトカゲのどこが良いの?」





















 あの緑の隈取りが超イケてるんだとか。よく分からんね。






「やあ!」

「待つのにも限界があるわよ。私の本はどこなの?」



 しかしEarana(イラーナ)に会うときはいつも雨だな。さっきまで晴れていたのに。ウチを待っていたら雨が降ってイライラしてるのかな? ちょっとからかってみよう。


「ああ本ね。ごっめーん、推薦状欲しさにTeekeeus(ティーキウス)に渡しちゃったわ」

「何ですって? あなたは彼にあの本を与えたというの? 一体何を考えているの?」

「ウソに決まってるだろ。ウチがそんなことするように見える?」

「……見えるわね」



 うーむ、この手の質問をするとなぜみんなそう答えるんだろうか? ウチはいたって日ごろの行いの良い人なのにな。ま、いっか。Teekeeus(ティーキウス)の部屋でくすねた……もとい、落ちてたということにした本をEarana(イラーナ)に渡した。ギルドの決まりじゃ、盗みはよくないけど、誰のものか分からない落し物を拾っても罪にはならないしねぇ……本に名前が書いてあるわけじゃないし。






「ああ素晴らしいわ! 本を受け取り次第解読作業に移るわ。少し時間がかかるの。また明日会いに来て頂戴」



 Earana(イラーナ)は本を受け取ると、いつも泊まっている宿―The Grey Mare(グレイ・メア)―へと向かっていった。報酬は解読作業が終わってからみたいだが……それまで時間潰そうか。何しようかな……。





 今後やるべき事のおさらい。今居るところが北西部のChorrol(コロル)。まずはここから南にあるSkingrad(スキングラッド)で、Nirnroot(ニルンルート)の事を聞く。ついでにそこのMages Guild(メイジギルド)で推薦状をもらう事も忘れないようにしないとな。その先は……。





 Skingrad(スキングラッド)の西にあるKvatch(クヴァッチ)で、皇帝の私生児であるMartin(マーティン)を探し出す。話によるとこの街にはMages Guild(メイジギルド)がないとの事なので、推薦状をもらう必要はないな。

 その後はMartin(マーティン)さんには悪いが、ウチの用事のために南西にあるAnvil(アンヴィル)まで行き、そこでまたMages Guild(メイジギルド)の推薦状をもらってくる。それが終わったらまたこのChorrol(コロル)にあるWeynon Priory(ウェイノン修道院)までMartin(マーティン)を連れてくる。

 いずれは他の街のMages Guild(メイジギルド)にも行く必要があるけど、今のところはこんなところかな。距離的に結構あるけど、馬ももらったことだし……馬?

 現在の時刻は正午を回ったところ。Earana(イラーナ)から報酬をもらうのは明日になるから、それまでは特にやることがない。暇なので馬に乗ってぶらぶらしようか。ガードにこのあたりの観光名所を聞くと、Chorrol(コロル)の西に大きなお店が建っているんだとか。そういや地図にもそれっぽいマークがあるな。せっかくなので行ってみよう。





 Chorrol(コロル)の南門から外に出ると、とたんに雨が上がってきた。本当に良く変わる天気だな。もともとChorrol(コロル)が山にあるようなところだから、なおさら天気の変化が激しいのかな? それともこれがこの国では普通なんだろうか。





 馬に乗って西へ向かうと、野生の鹿が逃げていくところだった。鹿か……鹿の肉は旨いらしいが、さっき昼メシ食べたばかりだし、今日はいいか。





 さらに進むと、何やら冒険者のグループがGhost(ゴースト)とやりあっていた。奥には倒したばかりのオオカミの群れが横たわり、そばには魔法使い風の男が立っている。うーん、昼間っからGhost(ゴースト)が現れるかなぁ?

 通り過ぎた後で後ろから怒声が飛んでいた。どうやら魔法使いが召喚したGhost(ゴースト)が魔法を味方に誤射したようだ。そりゃキレるわな。チームプレイは互いの連携が大事だぞ。





 前方の道に大きな岩がドンとある。何か前に見覚えのある地形があったような気がするんだが……。こっそり様子を見ると、向こうに人影が見えた。やれやれ、ここでも野盗がのさばっているらしい。どうせウチみたいに店に向かう観光客を狙った連中なんだろう。さっきの冒険者グループは別の方向へ行ってしまったし、こんなところまでガードがパトロールに来るようにも思えない。やれやれ、いっちょやりますか。





 先制のDrain Health(ドレイン:体力)を打ち込んで、まず1人を仕留める。とたんに散開する野盗たち。うーん、また弓持ちか。なら大したダメージ食らわないから、ガチンコで1人ずつ仕留めていくか。それそれぇ! 打ち込まれる矢の代償は、アンタらの命だぜぇい!






「ふぅ、ちょっと手こずったかな。全部で5人ってところか」



 最後の1人に止めを刺したところであたりを見回す。街道に転がる弓矢と野盗の死体。この先に店があるって話しだし、身包み剥いで売っ払ってしまうか。


「しっかし野盗って数が集まっても大したことないねぇ……ん、どうした愛馬ちゃん。なんで顔をあわせようとしない?」






 愛馬に話しかけてみたが、こちらに見向きもしない。というか意図的に目をあわせようとしない。どうした? なんかウチに付いてるか? ああ、そういやお前さんと一緒になって始めての戦闘だったもんな。あんな弱っちい野盗でも怖かったか、そうかそうか、愛い奴め。馬の緊張をほぐすため、少し時間を潰す。






「やあ!」



 店の近くまでやってきた。その付近に居たガードが、オオカミをあっさりぶっ飛ばしながら爽やかに挨拶をしてきた。電撃の属性斧だろうか、オオカミはしばらくケイレンを起こしていた。あと、ウチの目の前に居るSkeleton(スケルトン)はウチが召喚したものではない。どうやらこのガード、この店に雇われているみたいだが、かなりの手錬だぞ。防具も良さそうなの付けてるし。その調子でさっきの野盗もやっつけてくれればよかったのに……なんて思っていたら、またオオカミが現れたらしく、そちらの方へ走っていった。仕事熱心だね。






「さて、これがその店か」



 木造二階建ての大きな建物。店の脇には池もある。まるで店というより豪邸や別荘といった雰囲気だな。それじゃ早速おじゃましましょうか。





 店内は外観通りの大きな広さだ。パッと見で店員が3名。右には階段、正面には扉か。中央にはテーブルが据え付けられており、豪華な料理やワインまである。


「いらっしゃい」



 目の前の近くに居た店員に声をかける。






「ここって何のお店?」

「ここはオーナーが製作した防具や服飾品を販売するところでございます」



 オーナー? なるほど、これだけ大きい店を構えているんだから、個人商店の店長というよりも企業の経営者みたいなもんか。話を聞いてみると、ここのオーナーは自分で新しい服や防具を作るために世界を回っていて、あまりここに居ることは少ないらしい。まぁ確かに並んでる品を見るとセンスが良いと言うか何と言うか……。どちらかというとCyrodiil(シロディール)よりはウチの居た国のセンスに近い雰囲気を感じるな。もしかしてそのオーナーも、ウチのように他の国から流れ着いた人なんじゃないかと思ったが、ここに居ないんじゃ確かめようがないな。

 それじゃ、店に並んでるものでも見せてもらおうかな。なるほど、こちらは魔法使い向けの防具が多いな。


「それ、ちょっと試着してもいいかな?」







「おお、何か異国の大魔術師ってフインキじゃね?」



 試着してみたのは、白を基調とした魔法使い風のローブ。せっかくなのでポーズも決めてみた。どう、似合う? でもお高いんでしょう? 値段を聞いたら、一式で5000ゴールドぐらいするそうだ。高ぇ。ウチが買えるようなシロモノじゃないな。汚しちゃ弁償できないぞ。いそいそとローブを返した。





 店の中央にあるテーブル。ここのオーナーは気前が良いらしく、店内にあるものは商品以外は何でも持ってって良いそうだ。富豪の道楽というやつか。でもさっき昼メシ食べたばかり……って、さっきも言ったか。





 2階には個室があって、ベッドも好きに使って良いんだとか。本当に気前がいい……ん? なんだありゃ?





 純金で出来た神様の像か。こりゃ相当の価値がありそうだが、さすがにこんなの持っていくには重過ぎるな。売れば良い金にはなるんだろうけど。





 個室の方を見てみる。こちらにも料理が用意されていて、カーテンの先にはベッドもある。ワインもなかなかお高いものが……。あれ? このワインは……。

 Imperial City(インペリアル・シティ)の西の橋の先にある宿屋。そこの女主人がワインコレクターなんだが、あるレア物に縁がないとか言っていた。そのときに聞いた特徴が、このワインに合致する。もしかしたらこのワインのことなんだろうか? ……さっきの店員は商品以外なら持ってって良いって言っていたし、せっかくなのでもらっていこう。後でこのワインで合ってるのか確認しに行かなきゃな。





 2階を探索し終えた後は、1階にあった扉へ向かう。話によると地下にも店があると言っていたので、ここがそうなのだろう。





 地下の店員はみんな女性。ショーケースの中を見ると、女性ものの下着が並んでいる。なるほど、ここは女性もの専用の売り場というやつか。早速店員にワガママを言って試着してみる。






「なんだこりゃ」



 渡されたのは王女様セットらしい。どういう原理か分からないが、発光する妖精みたいなのも付いている。うーん、あれか。これが「こすぷれ」というやつなのか?





 どでかい剣も渡されたので、せっかくなので構えてみる。見た目ほど重い剣じゃないが……前から言っているとおり、ウチは槍専門なんで剣はイマイチ……。





 次に渡されたのは水着……じゃなく下着。しかも黒。なんかここの店員、ウチで遊んでないか? これ以上変なもの着せられてはたまらんので、更に地下にあるという店へと逃げることにした。






「やれやれだぜ」



 こちらは属性矢の店と錬金材料の店だそうな。属性矢か……ウチは弓使わないし。さっきの野盗から頂いた弓矢でも売り払うとして、錬金の方には少し興味あるな。並んだ商品を見てみたが、どれも珍しいものばかり集めてるせいかお値段がお高い。金に余裕があれば買い物したんだが……どうやらウチが来るにはまだ早いところのようだ。






「ん、なんの鍵だ、こりゃ?」



 カウンターに置かれていた1枚の羊皮紙と鍵。羊皮紙には何やら書かれていたが、相変わらず読めん。店員に聞いてみると、「隣のコテージを好きに使っていいよ、オーナーより」ということらしい。どんだけ気前いいオーナーなんだよ。

 この先には何もなかったので、店の探索も終了。外に出てあたりを見てくるか。そのコテージとやらも見てこよう。





 店の裏手はテラスになっていた。うーん、夕日を眺めながらの一杯はいいねぇ。小腹も空いてきたので、テーブルのものを一つまみ。





 これがさっき言っていたコテージらしい。早速鍵を開けて中に入ってみる。





 このコテージも二階建てだ。玄関開けたらすぐに扉と階段か。まずは1階から見てみよう。





 こちらは寝室のようだ。ベッドに暖炉。タンスには着替えも用意されている。せっかくなので今日はここに泊まるとして、2階はどうかな?





 2階は書斎になっていた。壁には本棚とポーションが所狭しと並べられ、机の上には新聞が広げられている。





 あえて文句を言うなら、ウチが文字が読めないって点だけだな。





 そして2階にはもう一つ部屋があった。この家の間取りを考えたら、小さい部屋だと思われるが。なんだろ?






「風呂か」



 浴槽にはお湯が張られ、常に最適の温度が保たれている。なんて充実したところなんだろうか。やはり金持ちのやることは分からん。


「そういやこっち来てから、まともに風呂に入ったことなかったな」



 入ったとしたら、せいぜい湖ぐらいか。このローブもずっと洗ってなかったし、せっかくなので……。


























































 風呂に入った後は、1階の寝室にある暖炉で髪を乾かす。ついでにローブも洗ったので、これも乾かすとしよう。乾くまではタンスの中の着替えでも寝巻きにしようか。






「さて、寝るにはちょっと時間あるな」



 取り出したのは一冊の本。Imperial City(インペリアル・シティ)の外に居た武道家が持っていた本だ。文字は読めないが、前に確認したときは絵本のようだったはずだが……。


「・・・・・。うん、これは、あれだな」



 エロ本だった。なんであの女、こんなエロ本持っていたんだ、まったく……。ベッドのそばにある他の本を手にとって見たが、こちらは普通の文字ばかりの本。何が書いてあるのかサッパリわからん。ええい、くそ。





 本を適当に戻して、横になる。ちょっと早いけど今日はもう寝よう。朝も早かったしな。明日はEarana(イラーナ)から報酬もらって、その後はSkingrad(スキングラッド)に……ああ、でもその前にワインの確認が……zzz。


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ひなみこと

Author:ひなみこと
昔:セクハラ騎士
今:セクハラ(される)魔術士

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