01日目 ~独房、暗殺、新天地~ (前編)
正直、ここがどこだか分からない。今いるところはどうやら独房だ、その程度は分かる。石造りの冷たい床と石積みの冷たい壁。申し訳程度の燭台と外から差し込む陽の光とで分かる限りでは、鍵のかかった鉄格子の門、壁と天井から吊るされた鎖と枷(かせ)、机と椅子、机の上に置かれた水差しとコップ、そしてこの独房の先輩であっただろう白い亡骸。
身を包む鎧の代わりにあてがわれたのは、丈の合わない粗麻の服。兜も盾も無く、自慢の片手槍も没収とな。相棒の怪鳥にまたがり戦場を駆けた騎士とは到底思えないナリに思わず小さく自嘲したのは、この独房へ入れられて何刻何日経った頃だろうか。
「起きろ! 何か言えよ。ああ、そこにいたか。そっちの檻はどうだい、んん? 居心地がいいだろう?」 |