2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

04日目 ~出立、野盗、ギルド~ (後編)



 いのしし が あらわれた!


 だが いのしし は まだ こちらにきづいていない!





 ひなみ は にげだした!


「うむ、無駄な戦闘は避けるに限る」



 昨日戦ったオオカミでさえ手こずったのだ。イノシシならなおさらタフな相手だろう。足はオオカミほどではないにしろ、強靭さと破壊力は上と見たほうがいい。相手が戦意を見せていないのならば、むやみやたらに戦う必要もないだろう。それに本来の目的は、皇帝から渡されたアミュレットを運ぶことだ。Baurus(バウルス)も、危険を犯さず出来る限り急げとか言っていたしな。うんうん、決してびびったりなんかしてないぞ。





 イノシシをやりすごすと、前方に砦が見えてきた。どうやらこの道は、あの砦を通過するように出来ているらしい。見た限り迂回路もないしな。このまま進もう。

 砦は結構荒れ果てていた。上を見渡すと、ところどころ上階の床が崩れて途切れているのが見える。今は使われていないらしいな。





 そのまま素通りして、砦の出口をくぐったところで、物陰から誰かが飛び出してきた。パッと見、ネコ科獣人のKhajiit(カジート)っぽいが……。






 
「金さえ出せば、命まで取らねぇが…命は惜しくないか?」



 やれやれ、また野盗か。しかもこりゃ追いはぎの類だな。あれだ、命が惜しけりゃ身包み全部置いてきな、ってヤツだ。もちろん、全力でお断りいたします。






 
「そっちの方が俺様も嬉しいねぇ!」



 すると追いはぎKhajiit(カジート)は、背中に担いだハンマーを振り回して襲い掛かってきた。単純なヤツだな……ほれ、出番だぞ。囮のSkeleton(スケルトン)を召喚する……が。追いはぎKhajiit(カジート)は、Skeleton(スケルトン)を無視してこちらに殴りかかってきた。なるほど、いい判断だ。ウチは砦内の柱に身を隠しながら、大降りハンマーをやりすごす。召喚している魔法使いを倒さない限り、Skeleton(スケルトン)はMagicka(マジカ)が切れるまで無尽蔵に現れるからな。





 だが、大振りすぎて当たらないのと、さっきからSkeleton(スケルトン)が背後から切りつけていることを考えると、こいつもさっきの野盗と一緒で頭悪ぃな。砦の中では魔法の間合いがうまく取れないので、外に誘い出す。Skeleton(スケルトン)はいい仕事をしているな……そろそろトドメと行こう。Drain Health(ドレイン:体力)の魔法を放つべく、照準を定めた。






「そらっ!!」

「くっ!」



 今まさに魔法を放とうとした瞬間、追いはぎKhajiit(カジート)が大降りハンマーの力を利用して大きく踏み込む! 幸い致命傷はまぬがれたが、ウチの放った魔法は直前に回避行動をとったため、大きく目標を外して飛んでいく。


「いかんいかん、Khajiit(カジート)の特徴はすばしっこいところだったな」



 ならば、その分も考慮した間合いを取ればいい。続く攻撃をかわしながら、大きくバックステップで間合いを取る。






「逃がすかよ!」



 追いはぎKhajiit(カジート)が、ウチが逃げに入ったと見て追いかけてきた。馬鹿め。いくらすばしっこいとは言え、重たいハンマーを担いでたらこの間合いには踏み込めまい。今度こそ狙い通り、Drain Health(ドレイン:体力)の魔法をぶちかましてやった。






「あいたたた、ちと油断してたな」



 ハンマーで殴られた跡を見ると、いい感じに打撲の跡があった。受けたダメージとしては、"ハンマー1発分>矢3本分"という感じ。やれやれ、ぽんぽん痛いっす。


「さ、追いはぎやってるぐらいだから、何か良い物でも持ってるだろう」


 なかった。どうやらここを通る方々は、通行料を踏み倒してずらかるのが主流のようだ。確かに全力で逃げられたら、いくらKhajiit(カジート)でもハンマー担いで追いつくのは無理だろう。ウチもそうすりゃ良かったな。痛む腹を押さえながら、先に進む。





 その後は何の障害もなく、すんなりと進むことが出来た。前方にはChorrol(コロル)の城壁と、Weynon Priory(ウェイノン修道院)らしき建物が見える。


「道中、野盗にあったりイノシシと遭遇したり……Vixen(ヴィクセン)が言っていた通り、治安悪いなぁ」






 Weynon Priory(ウェイノン修道院)に近づいてきた。正面に見えるのが本館で、右手の建物は礼拝堂かな? とりあえず人がいそうな正面の本館に向かう。


「おっじゃまっしま~す」






 中に入ると、いかにも神父ですと言わんばかりのカッパハゲが新聞を読んでいた。宗教関係者って何でこのカッパハゲスタイルが多いんだろうな。そのカッパハゲがこちらに向かって話しかけてきた。






「はい? 何か御用ですか?」

「Jauffre(ジョフリ)って人に会いに来ました」

「彼なら上の階ですよ。行ってご覧なさい」



 そう言ってカッパハゲは椅子にかけて、再び新聞に目を通し始めた。……って、スルーですか。普通、「失礼だがどちら様ですか?」ぐらいはあるんじゃないの? セキュリティ甘くね? もしくは、そういう人がしょっちゅう押しかけるから、こういう対応が普通になってるのかね? まいっか、言われたとおり上の階へ向かってみる。





 階段を上った先に、それらしい人が本を読んでいる。こっちもハゲだな。あのハゲ商人と同じヘアスタイルだ。彼の前に立つと、こちらに気づいて本から目を離す。


「あんたがJauffre(ジョフリ)?」







「私が修道士のJauffre(ジョフリ)だが。何か御用が?」



 修道士にして、皇帝を守るBlades(ブレイド)のグランドマスター。それが彼、Jauffre(ジョフリ)。なるほど、こうやって初対面の人には「修道士です(キリッ」って、すっとぼけるわけか。面倒なので手っ取り早く話を進めるべく、皇帝から渡されたアミュレットを見せる。すると途端に表情を変えだした。


「まさか。このアミュレットは皇帝しか手にできないはずだ。見せてくれ」



 はいよ。早速Blades(ブレイド)のグランドマスターの顔に切り替わったJauffre(ジョフリ)に、皇帝のアミュレットを手渡した。


「By the Nine!(ナインよ!) これはAmulet of Kings(王者のアミュレット)じゃないか!」



 宗教色の強い文化圏の人は、びっくりしたり困ったことがあるたびに神の名を呼ぶ習慣があると聞いたことがあるが、どうやらそれはこのCyrodiil(シロディール)でも同じようだ。何故そういう思考回路になっているかは、神を信じないウチには良く分からん。


「君は何者だ? これをどこで手に入れたんだ? 皇帝の死について何か知っているのか?」



 矢継ぎ早にJauffre(ジョフリ)が質問攻めをしてくる。ウチはJauffre(ジョフリ)に今まであったことを伝えた。牢に入れられていたら皇帝と会ったこと、暗殺者に襲われたこと、死の直前にアミュレットを渡されたことを。


「突拍子もない話だが、君を信じよう。君がAmulet of Kings(王者のアミュレット)を携えてきたのも、Uriel Septim(ユリエル・セプティム)の数奇な運命だけがなせる業だろうから」



 何やらウチが会う前から波乱万丈な人生だったらしいな、あの皇帝は。詳しくは知らんが。さて、皇帝の最後の言葉でよく分からん単語が出てきたな……何だっけ? 確か……そう。


「オブリビオンの顎(あぎと)を閉じよ、って何?」

「陛下の真意は私にも分かりかねる。陛下は、魔界Oblivion(オブリビオン)から何らかの脅威を感じ取っておられたのだろう。破壊の君主Mehrunes Dagon(メエルーン・デイゴン)はOblivion(オブリビオン)の支配者の一人だ。だが、人間界は、魔法の結界によってOblivion(オブリビオン)の魔物Daedra(ディードラ)たちから守られている」



 えーと、Jauffre(ジョフリ)の話を整理すると……。今いる人間界とは別にOblivion(オブリビオン)という魔界があって、そこにはDaedra(ディードラ)という魔物がいて、そいつらの王様の一人がMehrunes Dagon(メエルーン・デイゴン)というヤツだと。んで、そいつは人間界を狙ってるっぽいけど、魔法の結界で人間界は守られてますよって事ね。

 でも、皇帝の話からすると、そいつらが人間界を襲ってきそうだってことだよな? 魔法の結界があるのに? そのことをJauffre(ジョフリ)にも問いかけてみた。


「分からない。戴冠の儀の真の目的を知る者は、皇帝ただ一人。Amulet of Kings(王者のアミュレット)は、聖Alessia(アレッシア)が神々よりたまわった古の神器。偉大なる神々の遺物なのだ」



 聖Alessia(アレッシア)という言葉には聞き覚えがある。昨日、Vixen(ヴィクセン)から神々のウンチクを聞いたときに出てきた。広場の名前にもなっていたTalos(タロス)よりももっと前の時代の人で、ヒト族がこの国を支配する要になった人物だとか何とか……途中で眠くなったから良く覚えてないが、そういう人だってことだ。


「帝位を継いだ皇帝は、帝都にある最高神の神殿においてアミュレットをかざし、Dragonfire(竜の火)をともすのだ。皇帝が死に世継ぎも居ない今、幾世紀の中で初めて、神殿のDragonfire(竜の火)が失われつつある。Dragonfire(竜の火)は、ただ陛下だけが感じていた脅威から我々を守っていたに違いない」



 まぁどういう原理か分からんが、皇帝がそのDragonfire(竜の火)をともし続けていないと、魔法の結界が損なわれてしまうってことなんだろうな。んで、その皇帝が死んだ今、何とかしなきゃいかんというわけだ。あれ、でも皇帝は子供が居るって言ってたよな。


「皇帝は別に子供が居るって言ってたよ?」

「彼の存在は私を含め数人しか知らない。もうずいぶん昔のことになるが、私はUriel(ユリエル)の親衛隊のBlades(ブレイド)の隊長だったのだ。ある晩、私はUriel(ユリエル)の私室に呼ばれた。すると、赤ん坊が籠の中で眠っていた。私は赤ん坊を安全な場所へ運ぶよう命じられたのだ。赤ん坊については何も言わなかったが、彼の子だろうと思ったよ。折に触れ、子供の成長を確認していたからね」



 そこまで言って、Jauffre(ジョフリ)は一息ついた。そして、自分に確認するかのように、こう続けた。


「今や、この私生児がSeptim(セプティム)朝を継ぐ人物なのだ。生きていればだが」



 なるほど。どうやらこの国の危機的状況のときにウチは流れ着いてしまったようだ。大変なこったな。まぁウチはウチでやることがあるし、皇帝の最後の言葉とアミュレットを渡したんだから、もう用はないわな。


「彼の名はMartin(マーティン)。ここから南にあるKvatch(クヴァッチ)という街の教会で、Akatosh(アカトシュ)に仕えている」



 いや、そこまで聞いちゃいないし……。やるならそちらさんで勝手にやってよ? Blades(ブレイド)って騎士団なんでしょ? 人材豊富なんじゃないの?


「ただちにKvatch(クヴァッチ)に向かい、彼を見つけるのだ」

「だが断る」



 即答。ウチはウチなりに礼儀を尽くしただろ? 牢に入れられた罪は、アミュレットを届けた分でチャラになっただろう?

 だがJauffre(ジョフリ)も伊達に年はとっていない。こういうウチみたいな輩の対処の仕方は分かっていたようだ。


「必要な物があるなら何でも遠慮せずに言ってくれ。ここにある物資は少ないが、できる限り力になりたい



 これだもんな。どうやら"異国から来た女がテレポートの魔法を調べている"ってことは、Blades(ブレイド)の調査網に引っかかっていたようだ。それの手助けをするから……て事なんだろ?

 時期的に、皇帝が暗殺された後に現れたから、何か怪しいやつだと思われていたウチの事を調べていたのだろう。ただ、ウチがアミュレットを持ってくるほど深く関わっていた事までは分からなかったらしいがな。


「君も探しているものがあるんだろう? 交換条件と行こうじゃないか。君がMartin(マーティン)を探してここまで連れてくる。その間に我々は君の求めていることについて調べる。どうだ?」

「悪くない話だね。でも逆に聞きたい。Blades(ブレイド)ほどの組織力があるなら、真っ先にMartin(マーティン)を探し出す方に力を注ぐべきじゃないのかい?」



 ウチが聞き返すと、Jauffre(ジョフリ)は苦い顔をした。何か事情があるんだろうか。


「皇帝の暗殺の場に君のような部外者がいたことは、Baurus(バウルス)から報告があったので知っていた。君の話とBaurus(バウルス)の報告から察せられることは、皇帝の暗殺において誰かが中から手引きした者がいるのではないか、ということだ」

「つまり……スパイ?」



 Jauffre(ジョフリ)は静かにうなずいた。確かに、あの暗殺者は皇帝がどのルートを通って逃走するのか知っていたかのように待ち構えていた。そして下水へ続く扉を封鎖して罠にはめた。それはやはり、内情を知っている人物でなければ出来ないことだと思われる。

 Blades(ブレイド)の中にスパイがいる。とすれば、Blades(ブレイド)がMartin(マーティン)を探し出すことは、そのことがスパイにも伝わる可能性がある。そこでウチのような部外者が必要になったわけか。


「ここに立ち寄るBlades(ブレイド)のための物資がその箱に入っている。必要なだけ持っていってくれ」






 Jauffre(ジョフリ)は椅子から立ち上がると、棚の脇にあった宝箱の鍵を開けた。報酬の前払いというつもりか。でも、ウチまだ了承したわけじゃないんだけどな……まぁ悪くない話なので受けるつもりだけど。ひとまず何がいただけるのか、入っている物でも確認しておこう。




 中には戦士向けの武器や防具、いくつかのポーション。そして1枚のScroll(スクロール)が入っていた。Lightning Blast(ライトニング・ブラスト)。雷の破壊魔法だ。こいつは良いや、もらっていこう。あとは荷物がかさばるものばかりなので、適当に数本のポーションを頂いていく。


「Prior Maborel(マボレル院長)とBrother Piner(パイネル修道士)からも支援があるだろう。まだ用意が出来ていないなら、二人に聞いてみるといい」







「やあ!」



 Jauffre(ジョフリ)に言われたとおり、他の修道士に声をかけてみる。身なりからしてこいつがBrother Piner(パイネル修道士)っぽいな。カッパハゲ2号か。






「ようこそ、私は修道士のPiner(パイネル)です。何かお手伝いいたしましょうか?」

「おう、いいところで会ったな。実はJauffre(ジョフリ)に一仕事頼まれてな。何かと入り用なんだよ。あ、何かくれる? いや~悪いね」



 Piner(パイネル)は懐から何か取り出してウチに渡した。


「さあどうぞ。あなたに役立つでしょう。Blades(ブレイド)の訓練で得た本のうちの1つです」



 本……戦闘教書か……。ウチ、文字が読めないんだけど……いや、お前に悪気がないのは知ってるから……え? ああ、うん。もらっていくよ。


「Jauffre(ジョフリ)は私達に多くは語りませんでした。しかし、我らの祈りはあなたと共にあります」



 ああ……うん。こいつも良いヤツなんだろうけどさ。……Jauffre(ジョフリ)がお前らにあまり話さないのって、スパイがいて警戒してるんだぜ? もちろんそこまで教えてやらんけどな。Brother Piner(パイネル修道士)、善意が空回りする良い人って感じに思われる。カッパハゲ2号だけど。

 よし、んじゃ元祖カッパハゲのPrior Maborel(マボレル院長)にも聞いてみるか。階段を降りると、さっきと変わらずに新聞に目を通していた。よう元祖。なんかくれ。


「Blades(ブレイド)から重要な任務を与えられたようですね」



 あ、わかる? 実は何かと入り用で……。






馬が必要でしたら、どうぞ修道院の馬小屋にある私の馬を使ってください



 神降臨キター! いや、神様は信じちゃいないけど、今ならこいつが神様でも良いや。よく見たら後光が差してるようにも見えるし……あ、それは頭のせいか。よっしゃ、遠慮なく頂いていくぜ、ありがとさん!


「Talos(タロス)のお導きがありますように。幸運を」



 よっしゃ、馬小屋って言っていたな。どこだ? 館の裏手かな? 歓喜のあまりダッシュでそちらを目指す。お、いたいた。何やら馬の世話師みたいなヤツもいるな。






「調子はどうだい?」



 おう、もう絶好調さ! 矢で刺されたりハンマーで殴られたりした痛みも忘れちまいそうさ! ところで、あんたも何かくれる人?






「ここで羊飼いをしています。Eronor(エロノア)といいます」



 そうか、エロ夫と言うのか。何かくれ。


「ええと…自分は単なる羊飼いで、Jauffre(ジョフリ)さんに会いに来られるようなお偉い様方とは無縁なんだ。だけど、必要ならこのRepair Hammer(修理用ハンマー)を受け取ってくれ。どうせ、このあたりじゃ大して鍛冶仕事はないんだ」



 そう言ってエロ夫から受け取ったのは、武具を修繕するためのRepair Hammer(修理用ハンマー)。ウチは魔法使いなんで、あまり使い道はなさそうだな。今後、ゴブリンや野盗から武器をくすねたときに使ってみるかな。

 そんなことより馬だ。ウチはエロ夫に、Prior Maborel(マボレル院長)から馬を譲ってもらった話をした。エロ夫の話だと、Prior Maborel(マボレル院長)も昔は馬に乗ってあちこち布教活動をしていたんだけど、最近は足腰を痛めたとかで、もっぱらBrother Piner(パイネル修道士)が布教活動を引き継いでいるんだとか。んで、Prior Maborel(マボレル院長)はあまり外出しなくなったので、この馬もあまり出番がなかったところだったんだとさ。

 それじゃ遠慮なく頂いていこうか。よっこらせっくす、と。勢い良く馬にまたがった。






「おお、おお。何かいい感じじゃね?」




 ウチもこちらに来る前は騎士をやっていたので、騎乗にはなんら問題はない。あえて言うなら、ウチの居た国では、馬が少ないので乗る機会が無かったというだけで。





 のんびり馬に揺られながらWeynon Priory(ウェイノン修道院)を後にし、隣のChorrol(コロル)を目指す。ここからChorrol(コロル)へは、もう目と鼻の先。城壁に沿って城門まで行く程度。

 というかあれだな。馬って首が長いんだな。こりゃ騎乗戦はやりにくいわ。こちらの文化では、馬はあくまで交通手段にしか過ぎず、馬に乗って戦うなんて事はしないんだとさ。ウチの居た国じゃ、大型の鳥にまたがるのが主流だったしな。あれは馬みたいに首が長くないので、間違って首刎ねちゃいました~なんてことも無かったし。





 などと思っている間に、さっそくChorrol(コロル)の城門までたどり着いた……って、前にいるのはあのハゲ商人だよな。ウチがWeynon Priory(ウェイノン修道院)にいる間に追い越されていたらしい。ところでこのハゲ商人、イノシシ相手にどうしてきたんだろうかな?





 馬を下りてChorrol(コロル)の街中に入った。時刻は夕暮れ時。何かの銅像が飾られている。右手がChorrol(コロル)の城。中央通りが商店とギルド。左手が住宅街と教会だそうだ。ガードは何かと物知りだ。それじゃ目的のMages Guild(メイジギルド)へ向かおうか……と思っていると、向こう側から誰か近づいてきた。ヒト族じゃあないな……獣人じゃないし……。






「こんにちは。初対面だと思うけど、この街は初めて?」



 あれだ。トカゲだ。いわゆるリザードマンとか言われるようなヤツ。こっちの世界じゃ何て言うのかな? まあとりあえず返事しておこう。


「ええ。お会いできて嬉しいです」



 あいさつの基本。礼儀良く挨拶してきた人には礼儀良く返しましょう。今朝の真珠取り名人みたく、いきなり自分語りするような輩になっちゃダメだぞ。


「こちらこそ! 誰かと新しくお知り合いになれるのは嬉しいものです」



 彼女―性別の区別が付かないが、とにかく女性―はDar-Ma(ダー=マ)と名乗った。母親が雑貨屋を営んでいるとのこと。初対面なりに一通り世間話をしたあと、彼女はその雑貨屋へと向かっていった。





 さて、ギルドはどこかな? Chorrol(コロル)の街の北部にある広場。この大きな樫の木が街のシンボルらしい。街の人はこの付近に集まって世間話に興じるのだとか。ちょっと聞いてみるかな。






「あ~ん?」

「うおっ、まぶしっ」



 いや、もう暗くなってきたから別にまぶしくはないけどな。ついつい言葉が出ただけだ。許せ、ハゲ。


「どうかしたかい?」



 隣に居た緑の服のHigh Elf(ハイエルフ)の女性が問いかけてきた。Mages Guild(メイジギルド)を探してることを言うと、急に黙ってしまった……何か変なこと聞いた? 隣ののハゲ商人が代わりに場所を教えてくれたけど……彼女、何かMages Guild(メイジギルド)に関係でもあったのかな?





 ハゲ商人に教えられた場所はすぐそばだった。Mages Guild(メイジギルド)の看板が出ていたのだが、いかんせん文字が読めないので、とにかくこの看板の特徴は覚えておかないとな。って、さっきまで晴れていたのにまた雨か。





 Mages Guild(メイジギルド)の中に入ると、ここでもトカゲが現れた。目の周りに緑の模様が付いているので、区別がしやすそうだ。椅子に腰掛けて一杯始めている。ああ、時間的に丁度夕飯時だな。






「ようこそ、市民よ。何の御用ですかな? ひょっとしてMages Guild(メイジギルド)に入会したいとか?」



 むむっ、こやつウチの心が読めるのか。侮れんな……と思ったら、単に加入キャンペーンをやっていただけだった。加入するけど、特典とかないの? あ、無いのか……。


「ギルドの会員資格は大変な名誉、しかし責任をも伴います。本当にギルドに入会したいのですか?」

「お~いえ~」



 なんともやる気の無い返事で答える。どうやらこの緑隈取りトカゲ、インテリ系にありがちなカタブツっぽいな。「ちょっと男子まじめにやりなさいよ!」とか言いそうな……あ、でもどうやらコイツ男っぽい。


「よろしい。ギルドの位階は、まずAssociate(準会員)から始まります」



 緑隈取りトカゲ……もとい、Teekeeus(ティーキウス)と名乗ったトカゲは、このChorrol(コロル)支部の支部長なんだとか。で、ご丁寧にもTeekeeus(ティーキウス)はギルドの綱領や罰則事項をイロイロと教えてくれた。まぁ同じギルド員に怪我を負わせたり物を盗んだりしたらダメってことね。はいはい。


「もしあなたがThe Arcane University(魔術大学)に入学を希望するのであれば、全てのギルド支部から推薦を得る必要があります。それまでは大学に立ち入る事は出来ません」



 へ~、全ての支部から推薦ね……。なんですと!? 全ての支部!? ギルド加入だけじゃダメなの? マジかよ……。Vixen(ヴィクセン)の言っていた「長くなる」ってのはこの事か。


「んじゃ、早く推薦をくれ」

「残念ながら、いきなり推薦状を書くわけにもいきませんな。内規にも反することです。お分かりかな?」



 わからん。もったいぶってないで早くよこせ。あるんだろう、裏口入学とかさ? ほれほれ。


「そうですね、Earana(イラーナ)に関するちょっとした問題を解決して頂ければ、ギルドへの忠誠が認められ、私から推薦を得られるでしょうね」



 お、意外。カタブツだと思っていたのにすんなり条件提示してきた。早速その問題とやらを聞いてみることにした。


「Earana(イラーナ)って?」

「彼女と私には不愉快な経緯があるのです」























 Teekeeus(ティーキウス)本人と、後は周りに居た他のギルド員の話をまとめると、こうだ。

・Teekeeus(ティーキウス)とEarana(イラーナ)はもともとThe Arcane University(魔術大学)に通っていた。
・Earana(イラーナ)はたびたびルール破りをしていた。
・Teekeeus(ティーキウス)が告げ口して、Earana(イラーナ)はMages Guild(メイジギルド)から除名処分された。
・Earana(イラーナ)がTeekeeus(ティーキウス)のある事ない事ウワサを立てて、Teekeeus(ティーキウス)もThe Arcane University(魔術大学)で就いていた職からChorrol(コロル)の支部長に降格させられた。
・最近、Earana(イラーナ)がChorrol(コロル)にやってきた。すれ違ったときにはすごい形相だった。
・Earana(イラーナ)はChorrol(コロル)で何かを探しているらしい。

 う~む。周りの人の話から推測すると、Earana(イラーナ)の逆恨みが原因っぽいなぁ。で、Teekeeus(ティーキウス)は地方に飛ばされたけど、それだけじゃ物足りずに……ってあたり? なるほど、Teekeeus(ティーキウス)、お前さん暗い夜道には気をつけないとヤバイかもな?

 ところで話は変わるが……Elf(エルフ)と言えば若くて美形が多いと聞いていたんだが。Teekeeus(ティーキウス)の傍らに居たギルド員のこいつ。





 どう見てもハゲデブ。Elf(エルフ)が美形ぞろいってのはデマだったようだ。でもこのハゲデブ、こう見えて召喚魔法のスペシャリストなんだとか。その量と質はVixen(ヴィクセン)を凌ぐほど。複数のSummon(サモン召喚)魔法とか、全部位同時のBound(武具召喚)魔法とかも出来るんだと。そいつはすげぇや。ハゲデブに加えて召喚オタクかよ、救いようが無いな。名前は? え、阿修羅ガール? あ、失礼、Athragar(アスラガール)ね。あんた、Earana(イラーナ)の外見特徴って分かる? ウチ知らないんだけどさ……。

 なんだ、さっき外であったHigh Elf(ハイエルフ)の女がEarana(イラーナ)らしい。やっぱりMages Guild(メイジギルド)に関わりのある人間だったようだ。まだ外にいるかな?





 外はまだ雨降りだったが、Earana(イラーナ)たちは気にせず世間話に興じている。あのハゲ商人もまだ居た。濡れるの気にしないのかね。ウチはEarana(イラーナ)に話しかけてみることにした。


「あなたがEarana(イラーナ)?」






「ああ、そうよ。あなたはギルドの魔術師ね。そうでしょう?」

「成り立てほやほやの、ギルドの一員でございますが、何か?」

「ちょっとした問題があるの。あなたならきっと助けになってくれる。それは、あなたのギルドが首を突っ込むような問題じゃないの。私たちの2人だけの秘密にするのが一番なの。そう思わない?」



 なるほど、ギルドに関わりのあることだけどギルドに深く突っ込まれたくない。まさにウチのような新人ギルド員が丁度いいってわけか。


「いいよ、どんな話?」

「嬉しいわ。本当に単純な仕事よ…あなたはただ、本を私に持って来てくれればいいの」

「本?」

「そう。本の名前は『Fingers of the Mountain(フィンガー・オブ・ザ・マウンテン)』。あなたには役に立たないものよ。読むことが出来ないでしょうから。しかし私には違う。とても役に立ちそうなの」



 ウチは元からこっちの文字は読めないんだがな……。だがEarana(イラーナ)の話ぶりからすると、古代文字か何かで書かれた本だということなんだろう。


「本は、Cloud Top(雲天)と呼ばれる古い遺跡にあるわ。Chorrol(コロル)の北の山を登ったところよ。残念ながら、本の正確な位置は分からないの」



 山の中か……野生動物がわんさと出そうな感じだな。おそらくEarana(イラーナ)が自分で行かないのは、そういった敵への対処が出来るタイプじゃないんだろうな。ま、戦闘向きじゃないってことか。


「本を手に入れたら、すぐに私のところへ持って来て。この件は、Teekeeus(ティーキウス)や他のギルド員には決して口外しないで」

「いいけど、なぜ?」



 残念。すでにウチはTeekeeus(ティーキウス)側の依頼で来ているんだ。もちろんベラベラ喋るつもりだ。ウチはEarana(イラーナ)の目的と、報酬の話を聞くと、そのままMages Guild(メイジギルド)に引き返した。う~、さぶさぶ。

 あ、Teekeeus(ティーキウス)の旦那。Earana(イラーナ)の目的が分かりやしたぜ。






「なんですと? 彼女は本の存在のみならず、その所在までも知っていたのですか? それは由々しきこと。あの本はギルドにより厳重に保管されねばならないのです」



 Earana(イラーナ)の話も踏まえると、この件についてTeekeeus(ティーキウス)の言葉を全面的に信用するわけにはいかないようだ。Teekeeus(ティーキウス)もこの件の当事者。しかも結構深く関わっているようだ。

 他のギルド員も、支部長のTeekeeus(ティーキウス)に対して悪く言うことはないだろう。飛ばされたとはいえ、元大学職員というコネを持つ彼の肩を持てば、ゆくゆくは自分も大学へ行けるかもしれない。ハゲデブオタクのAthragar(アスラガール)に至っては、ここでの修練に嫌気がさしている様子で、Teekeeus(ティーキウス)をかなり持ち上げている節がある。


「ギルドのメンバーである貴方を信じておりますぞ。あなたなら正しい判断をし、Earana(イラーナ)より先に本を見つけられるでしょう。よいですか? あの女の依頼は忘れなさい。そして、彼女が言った場所へ向かい、本を手に入れてください。ただし、彼女のもとではなく、私に本を持ち帰るのです。これは議論の余地もない重要事項なのですぞ」



 ウチにとっても重要事項だ。この件の背景にどんな事情があるにしろ、本を持ち帰り、Teekeeus(ティーキウス)に渡すことで大学への推薦状を書いてもらう。それが最も重要なこと……へっくし! う~さぶさぶ。雨に打たれて体が冷えちまった。本を探すのは明日だな。ウチは上階にある宿舎で休むことにした。





 行商とそのお供が階段を占拠している。どうやら上階にいるギルド員の誰かに会いに来たようだが……ええい、邪魔だ! 道をどけ……へっくし!! あ、すまん。鼻水ついたな。気にするな。でもおかげで道をゆずって頂いた。






「お前は良い奴だ、友よ。いらっしゃい」

「う~さぶさぶ……ついでに腹も減ったな」



 手前の短髪Imperial(インペリアル)がAlberic Litte(オルベリック・リット)、既婚で奥さんアリ。奥のハゲHigh Elf(ハイエルフ)がAngalmo(アンガルモ)、このギルドのAlchemist(錬金術師)。






「Teekeeus(ティーキウス)の問題は解決しそうですか?」



 Imperial(インペリアル)のAlberic(オルベリック)が話しかけてきた。このImperial(インペリアル)って人種は大変社交的で腰が低い奴が多い。それはこのAlberic(オルベリック)も例外ではない。


「あ~、明日は本探しに山登りさね」

「本……それはEarana(イラーナ)が探していたという?」

「そう。『Fingers of the Mountain(フィンガー・オブ・ザ・マウンテン)』っていう本なんだけど……」

「『Fingers of the Mountain(フィンガー・オブ・ザ・マウンテン)』……それはAyleid(アイレイド)と魔法的な天候の制御に関するものではないですか? 私はそういう噂を聞いたことがあったと思います」



 Ayleid(アイレイド)……Cyrodiil(シロディール)の支配者が人間だった頃の前の時代。その頃の人間は、Elf(エルフ)の奴隷だったんだとか。

 その頃の遺跡に関わるシロモノらしいな、その本は。Earana(イラーナ)の話によれば、大学ではAyleid(アイレイド)の遺跡について調べていたらしいが。






「たとえそうであったとしても、未だにそれが実在するとは信じられません」



 まったくだ。なんでもAyleid(アイレイド)の時代ってのは数千年以上も昔の話だ。例え実在したとしても、それが今でも機能しているとは到底思えない。……って、ハゲには聞いちゃいなかったんだが。あ、そうだ。


「Alchemy(錬金術)に詳しいだろ? こんなの見つけたんだけど何に使うか知ってる?」



 Angalmo(アンガルモ)に、Nirnroot(ニルンルート)と言われる植物を見せてみた。


「フーム、なるほど。聞かれても困りますが…もし私に時間があれば、あなたからそれを買い取ってSkingrad(スキングラッド)にいるSinderion(シンデリオン)に持っていくでしょうね。彼は変わった植物の専門家なのです」



 Skingrad(スキングラッド)……Imperial City(インペリアル・シティ)から南西に行ったところにある街だな。更に先に進むと、Martin(マーティン)が居るというKvatch(クヴァッチ)。更にはAnvil(アンヴィル)という街に続くのだとか。そのAnvil(アンヴィル)の西の浜で、ウチが乗っていた船が流れ着いたんだとか。大学への推薦状のためには、いずれそれらにも向かうことになるだろうな。

 話を戻して。そのSkingrad(スキングラッド)にいる死んでるよん……じゃなかった、Sinderion(シンデリオン)なら詳しく分かるって話だ。早いうちにMartin(マーティン)を探しにKvatch(クヴァッチ)まで行くんだから、途中で立ち寄った際に会いに行くとしよう。

 よし、飯も食ったし、寝るとするか。もう一つ上の階が宿舎になっているので、そちらへ向かう。






「こんばんは、新入りさん」



 彼女はMei(メイ)という名のHigh Elf(ハイエルフ)。パッと見、Vixen(ヴィクセン)かと思ったぜ。High Elf(ハイエルフ)で金髪で、同じ色のローブを着ているしな。


「ベッド空いてる?」

「そうね……今からなら右手奥の部屋が開いてるわよ」

「ありがと」






 さて、横になりながら状況をまとめるとしよう。これからのスケジュールとしては、だ。

・『Fingers of the Mountain(フィンガー・オブ・ザ・マウンテン)』という本を探しに、北の山にあるCloud Top(雲天)という遺跡―おそらくAyleid(アイレイド)時代の頃と思われる古い遺跡―に行く。
・見つけた本をTeekeeus(ティーキウス)に渡し、大学への推薦状を書いてもらう。
・Imperial City(インペリアル・シティ)の南西にあるSkingrad(スキングラッド)に行き、Sinderion(シンデリオン)からNirnroot(ニルンルート)について尋ねる。
・ついでにSkingrad(スキングラッド)のMages Guild(メイジギルド)で推薦状をもらう。
・Martin(マーティン)を探しに、Skingrad(スキングラッド)の先にあるKvatch(クヴァッチ)まで行く。
・Kvatch(クヴァッチ)の更に先にあるAnvil(アンヴィル)のMages Guild(メイジギルド)で推薦状をもらう。
・Weynon Priory(ウェイノン修道院)までMartin(マーティン)を連れて行く。

 ざっと挙げただけでも結構やることが多いな……。一つ一つ片付けていくとして、今日は寝るとしよう。おやすみなさ~い。



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ひなみこと

Author:ひなみこと
昔:セクハラ騎士
今:セクハラ(される)魔術士

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセス数(5/30設置)
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR