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04日目 ~出立、野盗、ギルド~ (前編)



 太陽がその姿を見せた頃、ウチは朝の準備を済ませて宿を出た。昨夜顔をあわせた、Lop-Ears Elf(ロップイヤー・エルフ)のLeaf(リーフ)も、ウチと一緒の時刻に宿を出る。冒険者はその目的によって、朝早かったり、夜遅くに出かけたりと様々だ。Leaf(リーフ)は前者だったようだが。

「さて、ウチはひとまず魔法大学へと行くとしますか」


 


 一度渡った橋を、今日は引き返す形で走っていく。目的地はImperial City(インペリアル・シティ)の南東部にある魔法大学。Mages Guild(メイジギルド)の総本山。そこで調べれば、ウチの知りたいことも分かるかもしれない。昨日、Vixen(ヴィクセン)はそう教えてくれたが。


「この時間じゃまだ起きてないだろ。よし、Vixen(ヴィクセン)の寝ているうちに、あんなことやこんなことを……」







「あら、おはよう」



 ち。起きていたか。商人の朝は早いらしい。商品の準備やら何やらあることを考えれば、早いうちに起きなきゃ間に合わないんだろうな。


「これから魔法大学に?」

「おうよ。んじゃな」

「そ。またね」

「おう」






 Imperial City(インペリアル・シティ)への入り口。城門とでも表現するべきか。なんとも無駄にでかいシロモノを開けて、Imperial City(インペリアル・シティ)へと入る。





 Imperial City(インペリアル・シティ)、Talos Plaza District(タロス広場地区)。Talos(タロス)とは、Nine(ナイン)の神のうちの9番目の神様の名前。もともとはCyrodiil(シロディール)の皇帝だったのが、死後に奉られて神様になったんだとか。皇帝だった頃、すなわち神様になる前の名前は、Tiber Septim(タイバー・セプティム)。暗殺されたUriel Septim(ユリエル・セプティム)の先祖にあたるとのこと。……全部Vixen(ヴィクセン)から、昨日聞いたばかりの話なんだけどな。

 なんか乞食が「マネーマネー」言ってるけど、無視。金がほしけりゃ働け。そこらに生えてる草やキノコでも売れば、まともな金にでもなるだろ。





 街角にポスターが貼られていた。さっきの乞食に1ゴールド恵んで聞いた話によると、Arena(アリーナ)の宣伝ポスターだそうだ。青組と黄組のどっちが勝つかを賭けるんだとか。大して興味ないな。





 Temple District(神殿地区)。今日も素通りの縁のない場所。何やらさっきまで晴れていたのに、急に雲行きが怪しくなってきたな……。





 Arboretum(植物園)。名前のとおり、樹や植物が生い茂る場所。天気が良けりゃ、もう少し綺麗なところなんだろうが、今日はあいにくの天気。気の細い人なら、植物をお化けと間違えてしまいそうだな。その天気については、今にも雨が降り出しそうな気配だ。






「ええい、言ってるそばから降ってきたぞ」



 Arboretum(植物園)から南東に向かうと、橋の先に見える魔法大学。まだ午前中だというのに、雨が降ってきたせいで、あたりが暗くなってきた。






「やれやれ、やっと着いたか」



 宿を出てからおよそ2時間。ようやくこの魔法大学へとたどり着いた。路面にはいかにもなシンボルマークが描かれている。太陽と単眼。あいにくウチは、ロリコンスキーではないので、特に恐れる必要もない……ああ、あれは別な話か。


「おじゃましまーす」



 目の前の扉を開けて、魔法大学へと入る。






「……誰もいねぇ」



 関係者はもちろん、大学の生徒や受付の人間もいない。あたりをイロイロ見ながら時間を潰してみたが、一向に誰も来ない。奥に扉はあるが鍵がかかっている。1時間ほど待ってみたが、さすがに飽きたので他の場所を見てみることにした。






「こっちも開かねぇ」



 大学に入らないと入場禁止というヤツか、これは? 鉄の扉は押しても引いても開く気配がない。空を見ると雨が上がって晴れ間が広がっていた。結構無駄に時間を使ってるな。仕方ない、さっきの部屋に戻って、誰もいなかったら今日は諦めるか。





「お、いたいた」



 ウチが外に出ている間に戻ってきたのだろう。緑のローブの男が立っていた。さっそく話を聞いてみようか。






「The Arcane University(魔術大学)へようこそ」

「ようこそじゃねぇよボケ。さんざん人を待たせやがって」

「ああ、それは失礼を。朝から緊急の会議がありましてな。それで、どのようなご用件で?」

「ある魔法について調べてる。テレポートの魔法なんだけど……」

「失礼。あなたはまだMages Guild(メイジギルド)の一員ではありませんね?」

「……そうだけど?」

「であれば、まずはMages Guild(メイジギルド)の一員になってください。このThe Arcane University(魔術大学)は、一般には開放しておりませんので」



 なんですと。Vixen(ヴィクセン)め、そんなこと一言も言っていなかったじゃないか。あ、だから今朝「またね」って言ったのか、あんにゃろめ~。


「……で、Mages Guild(メイジギルド)に加わるためには? ここじゃ加入できないのかい?」

「ええ、Mages Guild(メイジギルド)の一員になりたいと望むのなら、地方ギルド支部の長を探しなさい。彼らが指導してくれるでしょう」



 なんてこったい。わざわざ朝早く起きて、3時間もかかった結果が門前払いかよ。やってらんねー。

 とりあえず、さっきのヤツの話では、どこでも良いから地方支部に行って加入して来いってことか。しゃあない。どうせ早いうちにChorrol(コロル)のWeynon Priory(ウェイノン修道院)に行かなきゃならなかったんだ。Weynon Priory(ウェイノン修道院)に行くついでに、Chorrol(コロル)のMages Guild(メイジギルド)に行って加入手続きしよう。

 結局、来た道を戻る羽目に……。






「本日付のBlack Horse Courier(黒馬新報)ですよ、このニュースを知るのが誰よりも遅いと恥ずかしいですよ!」



 戻る途中のTemple District(神殿地区)で、新聞配りに会った。ウチは文字が読めないんだがな……。


「あ、お嬢さん、Black Horse Courier(黒馬新報)を受け取ってくれ。今日はGray Fox(グレイ・フォックス)特集だよ」



 しかし悲しいかな冒険者の性(サガ)。もらえるものは何でも頂く。文字が読めないって分かっているのに新聞をもらう。一応広げてみるが……やっぱり読めん。だが、唯一あった挿絵には見覚えがあった。いつか見たマスクマンの肖像だ。






「そうそう、これこれ」



 町のあちこちに貼られている指名手配書。名前はGray Fox(グレイ・フォックス)というらしい。へー。





 そんなこんなで、ようやくImperial City(インペリアル・シティ)の外まで戻ってきた。さっきまで晴れていたのに、またもや雲行きが怪しい……。ずいぶんめまぐるしく変わる天気模様だな。


「そんなことよりVixen(ヴィクセン)め、大学を利用するにはMages Guild(メイジギルド)に加入しなきゃならないって言ってくれれば、無駄足踏まずに済んだのに」



 坂を駆け下りて、橋のテントまで向かう。





 テントの中ではVixen(ヴィクセン)が腰掛けていた。ちょうど今は客もいないようだ。


「門前払い食らってきたぜ」

「でしょうね。だから昨日、Mages Guild(メイジギルド)に入ることを勧めたのに」



 ・・・・・。そういやそんなことも言っていたな。でも、魔法大学が一般に開放されてないことは言ってなかったんじゃないか?


「で、どこに向かうの?」

「え? ああ……ちょっとChorrol(コロル)の方に用があるから、そっち行くよ」



 Vixen(ヴィクセン)には、皇帝の暗殺だとかアミュレットとかの話はしていない。まぁ事が事だけにベラベラ喋るような話題じゃないからな。


「そう。長くなるわよ」

「……Chorrol(コロル)ってそんな遠いの?」

「いいえ。Chorrol(コロル)までなら急げば半日もかからないわよ。今からなら夕方ぐらいには着くんじゃない?」



 どっちなんだ一体。長いって言ったり半日かからないって言ったり……。


「そうかい。んじゃ早いうちに行って来るよ」

「ああ、ちょっと待って」



 そう言ってVixen(ヴィクセン)は、そばの宝箱を指差した。






「道中気をつけなさいよね。このImperial City(インペリアル・シティ)の付近はガードがパトロールに出てるけど、少し離れたら治安悪いわよ」



 宝箱の中にはVixen(ヴィクセン)の商品であろうポーションが何本か入っていた。


「餞別よ。死なれちゃ気分悪いからね」

「なるほど、これがツンデレというヤツか」

「……なにそれ?」

「いやいや何でもない、こっちの話。んじゃありがたくもらっていくよ」



 傷の癒しと、Magicka(マジカ)の回復のポーション。冒険にはかかせないものだな。


「はいはい、死なない程度にがんばりなさいよ」






 テントを後にして、一路Chorrol(コロル)へと向かう。何度か渡ったこの橋も、しばらく見納めかな。


「ん。誰かいるな」







「おはよう」



 釣り人らしき人物と出会った。なんか、昆布の養殖とかしていそうな格好。その格好なら、この雨も気にしなくて済むんじゃない? っていうか、また雨かよ。






「あんたも知っておるだろ。人生には敗北を認めねばならない時がある。そう、ワシは戦い、負けたのだ」



 なんだこのオッサン……ああ、前にVixen(ヴィクセン)が真珠取りのオヤジがいるとか言っていたな。こいつがそうか。何やら自分語り始めちゃってますけど。


「誰に負けたかって? 宿敵は誰だって?」

「いや、別に聞いちゃいないけど……」



 オッサンは人の話を聞かずにベラベラ喋っている。いや、自分語りとか興味ないし。あ、真珠のよく取れるところとかなら聞いてもいいな。

 だがオッサンは勝手に話を続けていた。


「笑わんでくれ…魚の群れなんだ」




















m9(^Д^)


















 さ、バカは放っておいて、先を急ごう。あ、こんなところに店があるぞ……鍵しまってるけど。店をほったらかしにして出かけてるのかな? 今度機会があれば来てみよう。





 道なりにまっすぐ西へ進んでいくと分かれ道。正面は何やら砦の跡。道は北と南に分かれている。もちろん北へ。お、天候が良くなってきたかな? 少しずつ明るくなってきだした。





 再び分かれ道。そのまま北へ行く道と、西へ進む道。当然ここは西でしょう。Chorrol(コロル)はここから西の方にあるんだから。雨はすっかり上がって晴れてきた。ホント、変わりやすい天気だこと。





 西の上り坂を進むと、重装鎧の騎士風の男が馬にまたがっていた。だが先に進む気配がない。一体何をしているんだろうか? 横に回って話しかけてみた。






「あ~ん?」

「うおっ、まぶしっ」



 頭の禿げ上がった……本人の名誉に言わせると、おでこが頭のてっぺんを越えるほど広くなった男。回復した天候によって更にその破壊力を増しているため、顔を直視できない。


「こんなとこで立ち止まって、何してるの?」

「ああ、俺は行商をやってるんだけどもよ……」



 なんだ、騎士じゃなくただの行商人か。紛らわしいナリをしてるんじゃない。


「その先の岩陰に、どうも野盗の類が居るみたいでな。先に進めないんだよ」






 そう言ってそのハゲ商人は、道の先を指し示した。道は大岩を迂回するようになっているが……ここからでは、その先を見通すことが出来ない。確かにあの岩陰に隠れていれば、不意打ちなどしやすいことだろう。道は上り坂になっているので高低差もある。戦闘においては、高いところに居るほうが有利なことは、弓矢の飛距離の優劣にも表されている。

 ただ、こちらが向こうの存在に気づいていたら、それは不意打ちとは言えないわな。よく気を配れば、何やらその岩陰の方から話し声も聞こえてくる。どうやら向こうはこちらに気づいていないようだ。


「大層な装備をしてるんだもの、あなたがやれば良いんじゃない?」

「おいおい、冗談は止めてくれよ。俺はただの商人だぜ? この鎧も商品の一部さ。俺自身は何の戦力にもなりゃしねぇよ。やるならアンタがやってくれ……冒険者なんだろ?」

「それこそ冗談でしょ? 重装鎧を着込んだ大の男が何もしないで、こんなかよわい女の子に野盗退治をさせる気?」

「頼むよ。報酬は払うからよ」

「のった」



 ウチは冒険者。得にならない仕事はしない。もらえる物は何でももらう。そのためには、こういった話術も必要になる。ハゲ商人は「やられた」と小さく呟いていたが、細けぇ事は気にしない。


「さて、隠れてる連中を炙り出すよ」



 Skeleton(スケルトン)を召喚して、前方に向かわせる。まずは戦力確認。どれだけの人数が居て、装備は何を持っているのか。そういった点を確認せずに、むやみやたらに突っ込むほどウチは無謀ではない。まぁこのハゲ商人から鎧と馬と武器でもかっぱらえば別だが。






「なんだこいつは!」

「野郎、どっから現れた!」



 馬鹿が炙り出されてきた。野盗はパッと見で3人。全員がDark Elf(ダークエルフ)。武器は弓矢と短剣か。弓で遠巻きに矢を撃ちながら、近づかれたら近接戦闘に切り替えるパターンか。


「おい、あそこにも居るぞ!」



 こちらに気づいたようだ。Skeleton(スケルトン)は囮として十分な仕事を果たしたな。






「はい、もう1回出番」



 ハゲ商人が戦力にならない以上、1人でも多くの囮が必要だ。再度Skeleton(スケルトン)を召喚する。見るともう1つの岩陰からもう1人、野盗が弓を構えて現れた。


「てめぇ! 魔法使いがDunmer(ダンマー)とやり合おうってか!」



 野盗の1人がSkeleton(スケルトン)を無視してこちらに切りかかってきた。おお、こわいこわい。二度三度と切りつけてくるが、その都度バックステップで難なくかわす。


「逃げてばかりかよ!」

「逃げる? ははっ、お馬鹿さんだねぇ。これは"引き離し"って言うんだよ、アンタと仲間をね」

「何っ!?」






 戦闘中に敵に後ろを見せるのが間違い。隙を見せた野盗に容赦なくウチのDrain Health(ドレイン:体力)の魔法が直撃する。何だい、体力を削る必要もないほど貧弱だったのかい。これじゃ昨日のオオカミのほうが強かったね。

 残りの野盗たちは、弓でSkeleton(スケルトン)を相手にしているが、3人がかりでようやく倒した程度。こりゃ弓の威力はMud Crab(泥ガニ)よりも弱いんじゃないか?

 仲間を殺された野盗が、何やらわめき散らしながら弓を構えている。……が。






「い~ち」







「に~」







「さ~ん」



 連携も何もあったものじゃない。揃いも揃って同じパターンで倒されるあたり、こりゃ本当のザコだったようだね。見ての通り、こちらは何の被害もない。






「やれやれ、大の男が4人も揃ってるのに、女の子相手に傷一つ負わせられないなんてね」

「いや、どう見ても刺さってないか、それ?」



 なに、見た目ほどじゃない。かすり傷程度だ。






「なんにしろ助かったよ。こいつはお礼だ」



 ハゲ商人から金貨の入った袋を渡される。もちろんいただきます。ごちそうさまです。


「あんた魔法使いだったのかい。Dark Elf(ダークエルフ)相手に炎の魔法を使わなかったところを見ると、経験を積んだ冒険者のようだが」

「あん? Dark Elf(ダークエルフ)って炎に強いの?」

「えっ……まさか、あんた知らずにやっていたのかい?」



 ハゲ商人の話では、Dark Elf(ダークエルフ)は炎に強い耐性を持っている種族なんだとか。炎の魔法はゾンビのような不死の存在に有効なので、冒険者はよく炎属性の武器や魔法を好むのだとか。この野盗たちは、そんなDark Elf(ダークエルフ)の特性を生かして、行商人や冒険者を狙っていたのだろう。

 ウチも炎の魔法は最初は使っていたが、ウチが今使える魔法は弱いものばかりで、削り目的にしか役に立たない。どうせ削る目的に使うのなら、囮としても使えるSkeleton(スケルトン)の方が役に立つ。Skeleton(スケルトン)が囮になりながら相手の体力を削り、弱まったところにウチのDrain Health(ドレイン:体力)の魔法でトドメを刺す、というのが今の戦闘パターン。

 この野盗たちは、それ以下の弱さだったけどもな。さて、身包みでも漁るかな。すぐそばに商人もいることだし。ウチはニヤリと笑みを浮かべながら、ハゲ商人に向き直った。





 野盗の持っていた武器をハゲ商人に売りつけ、一足先に進むと、前方からパトロール中のガードが現れた。もう少し早く来てたら、ガードが野党を退治してくれていたんだがな……あ、でもそうしたら報酬がもらえなかったか。






「お~、ここは見晴らしが良いねぇ」



 柵の向こうには、Imperial City(インペリアル・シティ)が見える。遠くから見る景色も良いものだな。坂道を登りながら来た道を振り返っていると、前方から物音がしたので向き直ると……。





 いのしし が あらわれた!


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ひなみこと

Author:ひなみこと
昔:セクハラ騎士
今:セクハラ(される)魔術士

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