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21日目 ~面会、復興、うわさ~ (後編)




「おらっ、もっと泣き叫べ! 俺を興奮させろ! わははははっ」



 おいおいおいおい、また同じ展開か? もしかしてヤラれてるのって、あの冒険初心者の女の子だったりしないだろうな?




 野盗の死体がごろごろ転がっている中、ヤッてる男とヤラれてる女と、止めに入るガード。ついでに野次馬のウチ。いや、様子見てから行動しようと思ったら、ガードがすでに助けに入っていたところだったってわけ。





 野盗の男は、ガードの一突きでお陀仏したようだ。ヤラれてた女の方は男の一突き……いやいやなんでもないよ、うん、どうやら無事ようだ。


「元気かい?」







「ええ、大丈夫……あ、あなたは」



 例の冒険初心者の女の子だ。


「どうだい、あれから結構経ったけど、少しは強くなれたかい?」

「……冒険者はやめて軍に入ったわ。こっちの方が身も鍛えられるし、実入りも良いし」

「なるほど。で、それでもまだ痛い目に合ってるわけか」

「・・・・・」

「冒険者にしろ軍にしろ、危険なことから身を引いたほうがアンタのためだぜ? じゃないと……」

「うるさいわね! 今回は……たまたまよ」

「たまたま、ね。たまたまウチやガードが通らなかったらどうなったかぐらいは分かるんだろ?」

「……ょく……強くなりたいのよ、わたしは! Hero of Kvatch(クヴァッチの英雄)みたいに!」



 へ、へぇ……。いきなりウチのことを言われて驚いたが、どうやらこの子はHero of Kvatch(クヴァッチの英雄)がウチだとは知らないようだ。ふーん。


「Hero of Kvatch(クヴァッチの英雄)なら知ってるよ。何なら今から会いに行くか?」

「えっ!?」



 まぁウチのことなんですがね。






「ちょ、ちょっと待って! なんであなたがHero of Kvatch(クヴァッチの英雄)と知り合いなの?」

「んー? まぁイロイロとね。ところでアンタ、名前は?」

「私? Patricia Mellidius(パトリシア・メリディアス)だけど……」

「じゃあPatricia(パトリシア)。ウチはMatius(マティウス)に呼ばれてKvatch(クヴァッチ)に行くところだ」

「Matius(マティウス)って、あのCaptain Matius(マティウス隊長)!? Hero of Kvatch(クヴァッチの英雄)に従って、共にKvatch(クヴァッチ)を解放した、あのCaptain Matius(マティウス隊長)?」

「え? ああ、うん。そのCaptain Matius(マティウス隊長)だけど……」






 うーん、他人の噂ってのはよく分からんもんだな。イロイロ脚色されて、当人たちには何の話かさっぱりだぜ?

 この子……Patricia(パトリシア)の知ってる話だと、ウチことHero of Kvatch(クヴァッチの英雄)は実は亡き皇帝の隠し子らしく、密かに皇帝の遺言を携えて、窮地のKvatch(クヴァッチ)で単身Oblivion Gate(オブリビオン・ゲート)を閉じたということになっているらしい。ウチとMartin(マーティン)を足したような存在か?

 Matius(マティウス)はHero of Kvatch(クヴァッチの英雄)の指示に従い、生き残りのガードと共にKvatch(クヴァッチ)の街にはびこる49体のDaedroth(ディードロス)を打ち倒して解放に導いたんだとか。おいおいマジかよ、Daedroth(ディードロス)が49体って。脚色にしてはやりすぎじゃね?


「だけどCaptain Matius(マティウス隊長)はその戦いで大怪我を負ってしまい、今では一線を退いているんですって。でね、Hero of Kvatch(クヴァッチの英雄)との熱い友情の証として、Captain Matius(マティウス隊長)は自分の鎧をプレゼントしたのよ。カッコいいと思わない?」



 はぁ、そうですか。今じゃ道具箱の中でガラクタ扱いになっているけどな。おっと、それはこの子にはもちろん、Matius(マティウス)にも言わないようにしないとな。






「あの2つの角の中心に、Oblivion Gate(オブリビオン・ゲート)があったのね……」



 いやあ、それは間違いではないんだけども……実際はあの大きなゲートはウチがここに来る前に勝手に閉じられたって話だし、ウチが閉じたゲートはあの奥にあったヤツだしな。まぁ詳しく説明するのも面倒だ。


「さ、行くぞ」

「え、あ、まだ心の準備が……」



 はいはい。






「ここが……あのKvatch(クヴァッチ)……下から眺めたことはあったけど……」



 解放したとはいえ、その破壊の跡はまだまだ残っている。復興には多くの時間を必要とするのは間違いない。Patricia(パトリシア)がKvatch(クヴァッチ)の惨状に気を取られている隙に、ウチは手短にMatius(マティウス)に説明する。ウチの素性はバラすなってことと、この子をここで使ってほしいってことをだ。このまま無茶をさせ続けていたら、確実に命を落とす羽目になるだろうからな。初心者のうちは初心者なりの育て方をしないとな。


「他ならぬ君の頼みとあれば喜んで。こちらも人手はいくらあっても足りないからな」

「ありがと。ところで、わざわざウチを呼んだ理由は何だい?」

「そうだ、ぜひ君に手伝ってもらいたいことがあるんだ。その……Hero of Kvatch(クヴァッチの英雄)ほど名のある人間でないと出来ないことがね」



 最後の方はPatricia(パトリシア)に聞かれない程度の小声で説明された。


「まぁ乗りかかった船だ。ウチに出来ることなら手伝わせてもらうよ」







「そうか! 本当か! Skingrad(スキングラッド)からいくつか石材と建築士が必要なんだ。Skingrad(スキングラッド)とKvatch(クヴァッチ)は昔から友好関係にある国同士だから、Skingrad(スキングラッド)の伯爵に復興の手助けをお願いしようと考えていたんだ。だが私はここを離れることが出来ないし、それほど立場の高い人間でもない」

「そこで、Hero of Kvatch(クヴァッチの英雄)か?」

「そうだ。ぜひとも伯爵に面会して、Kvatch(クヴァッチ)への援助を取り付けてくれ」



 もともとMages Guild(メイジギルド)の方でも、Skingrad(スキングラッド)の伯爵に会う必要があったところだしな。丁度良いと言えば丁度良い。もっとも、Mages Guild(メイジギルド)の中でのウチの立場は、下から数えたほうが早いランクなんだけれども……。


「ねぇ、Hero of Kvatch(クヴァッチの英雄)はどこにいるの?」



 いっけね、忘れてた。






「え、ああ、うん、さっきまでKvatch(クヴァッチ)に居たんだけど、何か用があるとかいって出かけたみたいだって。な、Matius(マティウス)?」

「そ、そうとも。Kvatch(クヴァッチ)復興の手助けをしてくれていたのだが、どうしても外せない用というのあるらしくてね。しばらくしたらまた戻ってくると言っていたよ。何ならここで待ってはどうかな? いや、待ったほうが良い。いやいや、待つべきだね。その間に復興の手伝いをしてくれたら、Hero of Kvatch(クヴァッチの英雄)の君に対する印象も、きっと良いものになるんじゃないかな?」

「・・・・・」



 な、なんか途中から無理のある話になってないか、Matius(マティウス)?





 まあまあ何とか適当にごまかし、はぐらかしてPatricia(パトリシア)をKvatch(クヴァッチ)の街に残してきた。理由や過程はどうあれ、彼女にとってこれが良き結果に繋がるといいんだがな。





 さて、Kvatch(クヴァッチ)復興の援助の取り付けか。伯爵への面会は執事に頼んであるが、あれはあくまでMages Guild(メイジギルド)側の立場としての話だからなぁ。一応、執事に面会の用件が増えたことでも伝えておくか。





 けどまぁどっちにしろ、伯爵に会えるのは明日にならないと具体的なことは分からないとか言ってる執事だしな……あ、さっきの人。今時間いいかな? また伯爵への面会を取り付けるために執事に会いたいんだけど。






「なんだって? 伯爵に謁見したいだって?」

「さっきの用とは別で、Kvatch(クヴァッチ)復興の援助をお願いしたくてね」



 本当は、伯爵との面会の件で執事に会いたかったんだけどな。


「ふむ……Kvatch(クヴァッチ)を復興させるなんて出来るとは思えんし、伯爵も多忙の方でKvatch(クヴァッチ)に構ってられないと思うがな」

「まぁ今すぐ復興できるってわけじゃないけれども、それでも少しでも早めるためには、ぜひとも伯爵の力を借りたいんだよ」

「とは言ったものの……そうだな、私は料理長を勤めていて伯爵の晩餐に付き合うことがある。そのときに口を利いてやっても良いんだが」

「何だ、条件か? 出来ることにしてくれよ」

「実は明日の晩餐に必要な品を注文したのだが、今日届くはずがまだ届いていない。何か問題があるのか様子を確かめてくれないか」

「それならお安い御用さ。で、その注文した品と取引相手ってのは?」



 


 場所はSkingrad(スキングラッド)西にある農家のうちの1件。で、肝心の品についてなんだが、何を頼んだのかは教えてくれなかった。何でも誤解を与えかねない品だとかなんだとか言われたんだが……良いのかね、物を知らなくても。





 あったあった、農園から外れたところにある丘の一軒家。あれがそうだな。





 ちぃーっす。お城に納める品を受け取りに来やしたー。






「あ、ああ……城からの使者か」



 なんだ、ずいぶん覇気が無いけれども。


「実は……ゴブリンたちが夜に来て、品物を盗まれてしまったんだ。どうにか阻止しようと思ったんだが、返り討ちにあってしまってね。ヤツらは北の方から来ました。あのあたりには洞窟があった覚えがあるので、おそらくそこに住んでいると思われます。取り返していただければ、釣りをしていたときに拾った指輪を差し上げます。どうかよろしくお願いします」



 なるほど、面倒なことになったな。まぁ明日まで暇してるから、ちょっとゴブリン退治でも行ってくるかな。拾った指輪ってのがどれだけ価値のあるシロモノかは分からんが……期待はあまりしないほうが良いかな。





 言われたとおり北へ向かう。Glarthir(グラルシル)の転がっている広場よりもさらに先に、その洞窟が見えてきた。それじゃパパッと片付けて、盗られた品物とやらを取り返してくるか。なぁに、どうせゴブリンだ。大したことないさ。






























 だあ!! 何でこんなに多いんだよ畜生! 狭い通路の中で、Flame Atronach(炎のアトロナック)とゴブリンが"おしくらまんじゅう"やってる状態だ。こういう狭いところでは、Weak Fireball(ファイアボール)が役に立つ。範囲攻撃だし、何よりFlame Atronach(炎のアトロナック)に炎は効かないので、誤爆しても無問題だ。





 何体か倒したものの、相手は数で押してくる。こっちは時間切れのたびにFlame Atronach(炎のアトロナック)を召喚しなおして、魔法で攻撃してとMagicka(マジカ)切れに陥りやすい状況が続いている。やれやれ、ポーション足りるかな。





 よし、やっと最後の1匹倒し終わった。後はもう居ないだろう。何せ、戦いの騒ぎで他の敵が駆けつけ、それと戦っていたら更に奥からやってくるという状態だったのだ。





 おうおう。横たわるゴブリンの死体。死体。死体。





 さすがに疲れたな。ゴブリンの癖に弓を使うやつも居たしな。というかゴブリンの弓使いって初日以来かな……お、なんか怪しい箱発見。





 んー。これ……かな? 赤いポーション? いや、酒っぽいな。一応持っていこう。しかし赤い酒が晩餐に出てくるなんて、まるで吸血鬼みたいじゃないか、ははっ。





 ほかに何か無いかなぁ……と思ったらこれだよ。誘拐? 拉致? 監禁? どういう経緯でこんな目にあったんだろうかね、こいつは。





 それ以外にはこれといって特にない……む、誰か居るな。まだゴブリンが残っていたのか? 気づかれないうちに仕留め……あ、気づかれた。





 はいはい、間合いを取りながら戦いますよ~。それそれ~……って、何かおかしい?





 どうやらあのゴブリンは召喚魔法が使えるようだ。ウチがゴブリンめがけて打ったと思った魔法は、あのHeadless Zombie(首なしゾンビ)に阻まれていたってわけか。それじゃヤツはFlame Atronach(炎のアトロナック)に任せて、召喚主をさっさと仕留めるか。





 わずかの隙間からゴブリン目掛けてDrain Health(ドレイン:体力)Lv3!





 あれ、ゴブリンのくせに体力高いな。召喚魔法も使ってくるところをみると、このゴブリン族の親玉か?





 あうつっ! おいおい、雷の魔法まで使うのかよ。幸い昨日手に入れた雷防御の指輪のおかげで少しは防げたが、それでも痛いものは痛い。たかがゴブリンだと思って甘く見ていたが、洒落にならんな。というか、通路で戦っていると直接狙えん。この広間までおびき出すか。





 再び召喚されたHeadless Zombie(首なしゾンビ)はFlame Atronach(炎のアトロナック)に任せて、ウチはゴブリンが出てくるまで待機。通路から魔法を使ってきてるが、ここならウチが直接狙われる心配は無い。





 よし、出てきたな。Flame Atronach(炎のアトロナック)と一緒にゴブリンを囲んで集中攻撃だ!





 おっと、ゴブリンがウチに向かって魔法を打ってきたが、あのレア物アミュレットのおかげで効果なしだ。むしろMagicka(マジカ)に変換ごちそうさまです。それじゃこっちもお返しだ!





 って、向こうも魔法吸収かよ。本当にお返しになっちまったな。本当なら今のDrain Health(ドレイン:体力)でトドメになったはずなのに。ならもういっちょ……。





 あいだだだ! くそ、向こうのほうが先に攻撃してきたか! だが今度こそ止めを刺してやるさ!





 ゴブリンがウチに飛び掛るのと、ウチがDrain Health(ドレイン:体力)を打つのはほぼ同時だった。





 同じタイミングで攻撃したのなら。離れたところから飛び掛って直接攻撃を仕掛けるより、遠くから魔法を放つほうが先に相手に届く。その結果がこれだ。





 まぁ結構危なかったけどな。昔ならいざ知らず、今のウチは近接戦闘を考慮した装備じゃないからなぁ。こっちに来てから体も鈍ったままだし。

 ところで、さっきのゴブリンが居たところは何かめぼしい物とかないだろうか? ゴブリンの親玉なんだから、それなりに良い物を持ってても良いと思うんだが。





 Soul Gem(ソウル・ジェム)か。前にDelmar(デルマール)からSoul Trap(ソウル・トラップ)について学べとか言われていたが、結局まだ覚えてもいなかったな。ま、そのうちそのうち……。





 よし、この洞窟にはほかにめぼしい物はなかった。ということはさっきの赤い酒が該当の品って事で間違いないな。それじゃさっさと洞窟からおさらばだ。





 はい、一瞬にして洞窟の外まで来ました。このExtrication(緊急離脱)の魔法、こういう探索作業の帰りに使うのが一番効果的な使い方じゃないだろうか。





 ところですっかり暗くなっちまったな。ひとまずあの農家に戻って報告しておこうか。





 あいよ、取り返してきたよ。この赤い酒がそうかい?


「どうやら手に入れたようですね。貴方がヤツラをフルボッコにするお手伝いができればよかった。ああ、そうですね、これがお約束の指輪です」



 ふむ。それほど高価な指輪じゃないが、ちょっとしたお駄賃程度としては悪くないか。





 早速あの料理長に、この赤い酒を持ってってやろう。





 Skingrad(スキングラッド)の街中、Sinderion(シンデリオン)のいる宿屋の前で見知った顔を見かけた。全身鎧のHorkew(ホロケゥ)の戦士。別に用があるわけじゃないので、軽く挨拶するだけですれ違う。

 



 それよりも重要なのは行商人だ。店屋は閉店時間を過ぎてしまうと買い物が出来ないが、行商人は起きてる間はずっと商売中だ。





 とはいえ、ゴブリン相手の戦利品じゃ大したものは無いけれどもな。





 街を通り過ぎて、城へと向かう。前にはパトロールを終えたガードが城に帰る姿が見える。





 よっ、戻ったよ。この赤い酒で間違いないんだな?






「ああ、それです! それです! ありがとう。これで伯爵もお喜びになるでしょう。よかった、まだ彼にお目にかかりたいと思っていますよね? 明日、伯爵の晩餐の後に時間を取ってもらうよう働きかけます。必ず貴方に会えるようにします」



 おお、執事よりも早く面会の手続きが終わったな。始めっからこっちの料理長に頼んだ方が確実だったかもな。





 伯爵との面会を取り付けたので、後は明日まで待つだけだな。今日はもう遅いし、Mages Guild(メイジギルド)で休むとするかな。






「Cyrodiil(シロディール)全土でOblivion Gate(オブリビオン・ゲート)が開いているという不吉な噂を耳にした。ただの風説だといいのだが」



 おいすー。久しぶりー。今日はここで休ませてもらうよっと。なにやらギルドの誰かが嫌なウワサをしているが……残念ながら風説じゃなく事実なんだよな。ウチもKvatch(クヴァッチ)のゲート以外にも、ちょくちょく目にしていたからな。





 ギルド員に案内される形で寝室へと向かうと、おやおや、アンタも来ていたのかい。





 彼はErthor(エルソール)。推薦状の課題の時に会って以来だな。ああ、そうそう、彼には一応感謝しておかないとな。Erthor(エルソール)は召喚魔法の研究をしているのだが、前に彼を助けた際にちょいと召喚魔法について教わったことがあったからな。特に複数のSummon(サモン召喚)について聞いたことは、良いヒントになった。





 ちょいとErthor(エルソール)と雑談した後、眠りについた。明日は執事に会って、伯爵の面会についてイロイロ言っておかないとな。お前より料理長の方が役に立ったぞってな。


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ひなみこと

Author:ひなみこと
昔:セクハラ騎士
今:セクハラ(される)魔術士

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