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01日目 ~独房、暗殺、新天地~ (後編)



 下水道に巣くっていたネズミやゴブリンを、新たに覚えた魔法の実験体代わりにした後、鉄格子の扉を開けて下水道を出た。下水とは言っても、汚物が浮いてるような光景は無く、主に雨水の処理として使われているようだ。雨が降ればここから排出されるのだろう。下水道の先は川か湖か、綺麗な水辺につながっていた。


「ん、どうした?」




 新たに覚えた召喚魔法で呼び出したSkeleton(スケルトン)が何かに気づいてゆっくりと走り出した。何やらMud Crab(泥ガニ)と戯れている……いや、どうも本気で殺りあっているようだ。

 眼前には川、または湖か。その対岸にはアーチ状の構造物。白い石造りの建造物が見える。何かの施設だろうか?

 横ではMud Crab(泥ガニ)との戦いに勝利したSkeleton(スケルトン)が戻ってきた。が、結構ボロボロになっている。Mud Crab(泥ガニ)相手にそこまで傷を負うとは……骨だらけでよく分かりにくいけど。そして戦い終えたことに満足したのか、Skeleton(スケルトン)はその姿を消した。後で何度か試してみたが、この召喚魔法は制限時間があるようだ。今のSkeleton(スケルトン)は1分経たずに消えてしまう。覚えておこう。





 舗装などはされていないが、歩きやすく整備された道が、この下水道脇まで伸びていた。逆を言えば、この道を辿ればどこかにつながっているのだろう。

 岩陰の向こうに、何やら塔のような構造物が見えた。意外と近そうだな。





 ここから見える限りでは、2箇所に分かれた城壁といくつかの塔。おそらく中心に建っていると思われる塔がひときわ高い。あちらには、右に大きく迂回するこの道を進めば行ける様なので、まずは右手の城壁目指して進んでみる。

 どんどん道は上り坂になっていく。いつも騎乗スタイルだったためか、二本の足でここまで歩くのは久しぶりな気がする。運動不足かな、さすがに疲れてきたぞ。

 うん? 人の気配がするな。右の城壁の更に右奥の方。そちらの方へは道は延びていないが、歩くのに支障はない。道は右の小さい城壁区画と、左の大きい城壁区画。そしてその2つを結ぶ橋のそばへ繋がっていた。ひとまず右の方の人影が気になったので、ちょいとそちらへ行ってみようか。





 なにやら格闘家のような構えをした女性が見える。何だろう、あの容姿に見覚えがあるような無いような……。まあ近くに寄ってみよう。





 黒のロング髪。白くてすその短いシャツ。黒のすその短いパンツ姿。無駄に露出が激しいその女性は、ちょうどこちらに背を向けていて顔が見えないが、やはりどこかで見たことがあるような人だ。よく、金髪逆毛の大剣持ちの男と一緒にいるのを見かけたような気がするが。話しかけてみるか。


「あの~すいません」



 相手に見えやしないんのに、ついつい呼びかけるように手を上げた。すると呼んでもいないのに現れるSkeleton(スケルトン)。いや、確かに手を掲げるしぐさはしたけどさぁ。別に呼んじゃいないから。


「はい?」



 目の前の女性が、ウチの問いかけに振り返った。






「すいません、人違いです」



 顔は覚えていないが、少なくともこんなタラコ唇じゃなかったのは覚えている。顔さえ見なけりゃ間違いないんだが、顔がいろんな意味で間違いすぎる。

シャアアアアアァッ!





 突如、ウチの召喚したSkeleton(スケルトンが)、この似てないタラコに襲い掛かった。いや、気持ちは分かるがなぁ。ナンパ目的に呼び止めた女性が、振り返ると後悔したって感覚、分かるだろ?


「ちょっと! あなたの召喚したSkeleton(スケルトン)でしょ! 何とかしなさいよ!」

「いやぁ、何せ覚えたばかりの魔法なんで使い勝手がよく分からんもので。とりあえず1分ほど持ちこたえてください」

「何ふさげたこと……!」







「あ~あ、やっちまいやがった」



 Skeleton(スケルトン)の一撃が頭に直撃したようだ。ピクリとも動かなくなってしまった。うん、これは事故だ。ウチが直接殺ったわけじゃないし。それに誰も見ちゃいない。そう自分に都合の良い言い訳を考えながら、相手の懐を探る。ち、金目のものは持ってないか。鍵を1つ持っていただけだ。当然、拝借する。





 どうやら彼女はここで生活していたらしい。敷いたままの寝床と、鍵のかかった木箱。官能的なポスターが貼られているが……彼女の趣味なんだろうか。コイツ、ウチより変態かもしれん。とりあえずさっきの鍵で木箱を開けてみた。クローゼットだろうか。彼女が着ている服と同じものが数着入っていた。どれどれ……。





 試着してみたが、どうかな?

 だけどウチは格闘家ではないので、引き続き暗殺者のローブのまま行くことにした。このあたりには他に何も無いようなので、来た道を戻って橋のところまで来た。





 右より左の方が規模が大きい造りになっている。あの高い塔も左手側にあるようだ。更に人の声というか、町のざわめきのような賑わいがある。とにかく人に話を聞かなきゃ始まらない。そもそもウチはこの国―Baurus(バウルス)の話ではCyrodiil(シロディール)というらしい―のことをほとんど知らないんだからな。

 ウチは左手の建物へ進み、重たい扉を開けた。





 左右には揃いの鎧を着込んだ兵士。その間にバレバレなのに忍び足である滑稽な獣人。革の鎧を着込んでるが尻尾が見える。奥には石段があり、さらにその奥には人々が行きかう様子が見て取れる。

 町のことは町の人に聞け。ひとまず目の前の獣人に話しかけると、「なぜ俺の姿がわかった?」と言って驚いていた。バレバレだっつーの。そのネコ科の獣人は、町のことはガード、つまりその左右の兵士に聞けとだけ言って、またバレバレなのにコソコソと昼の街中を歩いていった。何なんだ、あいつ?

 その獣人ご推薦のガードに話を聞いてみた。このガード、まるで町のおまわりさんよろしく、町の施設の位置を次々教えてくれた。店はどこにあるとか、宿は各所にあるけど港の宿はやめておけとか。魔法のことについて聞いてみたら、すぐそばの魔法屋の位置を教えてもらった。


「どれどれ、ここかな」



 店の前には店名らしい看板が掲げられていたが、いかんせん文字がさっぱり読めない。文字のそばに店屋の特徴を示す絵柄が記されているので、これで判断していくとするか。


「おじゃましまーす」







「やあ、どうも」



 店の中に入ると、ちょうど他の客とすれ違った。ネコ耳。白いフサフサの尻尾の女の子。これがこの国のファッションなんだろうかな。その女の子はウチと入れ違いに店から出て行った。結構かわいかったな。

 店の主人、Calindil(カリンディル)は背が高く、耳が尖っている。Elf(エルフ)の一種だろうが、牢で会ったDark Elf(ダーク・エルフ)のあいつの話では、Elf(エルフ)だけでも結構な種類がいるそうだ。

 何でも、人間族がこのCyrodiil(シロディール)を支配する前は"Ayleid(アイレイド)"といわれるElf(エルフ)が支配していたそうな。そのAyleid(アイレイド)から様々な形に別れていったので、この世界にはたくさんの種類のElf(エルフ)がいるとのこと。

 ウチの世界ではElf(エルフ)なぞほとんど見たことが無かったがな。ウチのこの尖った耳は自前でなくアクセサリー。Elf(エルフ)はこういう容姿だということは知られていたので、ファッションとして身に付けることがある。なので、この耳は着脱可能ってわけ。ウチの世界じゃなかなか高価なシロモノなのだが、こちらじゃごく当たり前にElf(エルフ)がいるので、価値はほとんどないんだろうな。密入国ということで捕まったときに、この耳装備が没収されなかったのも、ウチをElf(エルフ)だと勘違いしたためのようだ。

 さて、この店主Calindil(カリンディル)いわく、テレポートの魔法は取り扱いが無い。むしろそんな魔法があるとは思えないとのこと。どんな魔法を取り扱っているのか聞いてみたが、価格がかなりお高い。ウチが持っているのは、宝箱やゴブリンからくすねてきた金貨が100枚に満たない程度。一方、Calindil(カリンディル)が販売している魔法は、安くても金貨200枚以上は要するものばかり。高ぇなぁ。


「もう少し安くて役に立つ魔法って置いてないの?」

「そうですね、覚える魔法ではないですが、安くて済むものならばScroll(スクロール)というものもございます。もっとも、Scroll(スクロール)は一度きりしか使えませんが」



 Scroll(スクロール)。Baurus(バウルス)から渡されたあれか。Cyrodiil(シロディール)の人間はお前みたいな使い方はしないとか言っていたヤツだ。この方法で魔法を覚えていけば安上がりで済むな。


「そっちで良いや。何がある?」



 いろいろあった。相手を怒らせたりなだめたりする魔法。相手の魔力や能力を奪う魔法。スケルトンの召喚もあった。だがイマイチ分からんものがある。


「Damage(ダメージ)とDrain(ドレイン)の違いって何だ?」

「ああ、はい。見習い魔法使いがまず初めに悩むことですね」



 む。確かにウチは魔法に関しちゃさっぱりだ。しかもこの世界は更に独自の魔法文化があるらしい。知らなくて悪いか。


「Damage(ダメージ)は恒久的に被害を与えるものですが、Drain(ドレイン)は一定時間しか被害を与えることが出来ないのです。その分、使用するMagicka(マジカ)は少なくて済みます」

「Magicka(マジカ)?」

「魔法を使うときに消費する力のことですよ。まさか、そんなことも知らないんですか?」



 なんだその人を小ばかにした目は。あれだろ、いわゆるマ○ックポイントだろ。表現が違うだけで概念は知ってるよ。


「Scroll(スクロール)はMagicka(マジカ)を消費せずに魔法を使うことが出来ます。ですのでDamage(ダメージ)よりもDrain(ドレイン)のScroll(スクロール)の方がお安いですよ」

「じゃあそれを……あれ……これはなんだ?」

「それは……その……Charm(チャーム)のScroll(スクロール)ですね」



 なんだ? なんか急に歯切れが悪くなったぞ。いかにも「しまった」と言わんばかりの顔をしているし。


「Charm(チャーム)の効果は?」

「この魔法をかけると、かけられた相手から好意的に見られるようになります。もちろん一定時間の間だけですが。気難しくて話をしてくれなかったり、とぼけたりする人に使うと、ちゃんと話が聞けたりするようになります」

「ふーん、他にも何か効果があるんじゃないの?」

「いやあ、あまり使ったことが無いのでそこまでは……」



 へー、そーなんだー、知らないんだー(棒)。


「そう、じゃあ先にそっちをもらおうかな」

「はい、24ゴールドです」








 話をごまかすヤツに使うと効果的ね。Scroll(スクロール)からCharm(チャーム)の魔法を覚えると、早速Calindil(カリンディル)に打ち込んだ。照明のときのような緑の光がCalindil(カリンディル)を包み込むと、ちょっと目の焦点が定まらない、呆けたツラになりやがった。……なんかこの魔法、ヤバくね?


「もう一度聞くよ。他にも何か効果があるんじゃないの?」

「ああ、はい。商売をしてる人に打つと好印象を持つので、物の売買の時におまけをしてくれるようになります」



 なるほど、Calindil(カリンディル)自身も商売人だから、あまり薦めたくなかったってことね。その気が無かったのに魔法のせいでおまけしてたら商売になりゃしない。ウチも知り合いに商売人がいるから、そこら辺はよく分かる。


「そう、じゃあさっきのDrain(ドレイン)のScroll(スクロール)も買っていくわ。いくら?」



 結果、まけてくれたのは1ゴールド分だけだった。Charm(チャーム)のScroll(スクロール)が24ゴールド。くそっ、どこか他のところで取り返しちゃるわ。

 さて、ウチの手元にはゴブリンが持っていた錆びた武器やら杖やらがある。正直重くてかさばるので売っ払ってしまいたい。ちょうどここは商業地域の区画のようで、店に困る心配は無い。Calindil(カリンディル)の魔法屋の2件隣りに、いかにも武器屋ですという斧のマークの看板があったので、そちらで片っ端から売り払ってきた。もちろんCharm(チャーム)の魔法を打ち込んでから。杖は買い取ってくれなかったが、武器だけで100ゴールド近くにはなったので十分元は取れたな。





 店を出ると、頭上から視線を感じた。誰かこちらを見ている?


「貴様!見ているなッ!」






 何だ、ただの人形か。マークの無い看板にぶら下がっているあたり、この人形がこの店のマークって意味か? 人形屋か子供のおもちゃ屋か。特に用はなさそうなところなので無視することにした。


「しかし、いろんなことがありすぎて疲れたな。どこかに休むところ……宿屋の位置でも聞いてくるか」



 先ほど道案内をしてくれたガードに再びたずねて、宿屋の位置を教えてもらった。この商業区画の中心より北西側にそれはあった。Calindil(カリンディル)の魔法屋は南東の奥にあったので、ちょうど反対の位置になる。





 宿屋の扉を開けると、酒場も兼ねているようで、客が何人か見える。魔法使い風のローブの女性。白銀の鎧戦士と、黒と金の鎧の戦士。奥には、陰になってよく見えないが、赤いローブのネコ耳魔法使いが座っている。右手には……最初に会ったあのネコ科獣人が同じスタイルで歩いていた。お前さん、泥棒じゃあるまいし……。





 突然、ネコ科獣人がすっと姿勢を正した。その様子を見た宿屋の主人が叫んでいる……なに? Thief(シーフ)? 泥棒? 見るとネコ科獣人の懐が不自然に膨らんでいる。どうやらテーブルの上にあった酒瓶をくすねたらしい。こいつ、どうやら本当に泥棒だったらしい。バレバレなことを除けば。

 そいつはまるで意に介さぬかのように椅子に座ると、早速くすねた酒を自前のジョッキについで一杯やりだした。宿屋の主人は、その光景をただ黙ってみている。何なんだ、この光景は……。目の前に泥棒がいるのに被害者は何もせず、ただ最初に「泥棒」と叫んだだけ。訳分からん。とりあえずウチも近くにあった椅子に腰掛けた。





 はい。泥棒さんの隣に陣取りました。一応ネコ科獣人に窃盗じゃないのか聞いてみたが、そ知らぬ顔でジョッキに口を付けている。左手には先ほどの白黒戦士コンビが談笑している。宿屋の主人はチラチラと入り口の扉の方を気にかけている。誰かを待っているのか? さっきの道案内ガードまでは声が届かない距離だと思うぞ。扉も閉まっていたからなおさら聞こえないだろう。


「スタァァアアアアアップ!」






 来た。さっきの道案内ガードが抜刀して踏み込んできた。ウソだろ、あそこからこの店までそれなりに距離はあるし、扉はしまっていたので声も届かないだろ。それにこのまわりは他にも店がいくつも並んでいただろう? それなのにこのガードはやって来た。どんだけ耳が良いんだよ。

 ネコ科獣人泥棒も流石にこれには驚いたらしく、椅子から立ち上がると関係ない振りをするかのように背を向けた。


「そいつが犯人だよ!」



 赤いローブのネコ耳娘がネコ科獣人を指差す。お前、背中向けてたから見てなかっただろ。しかしその指摘は効果あったようだ。






「ちっ、どけ!」



 ネコ科獣人はガードを突き飛ばして駆け出した。上手くとぼけて切り抜けようとでもしたのか。しかしその行く手をふさぐように、白黒コンビが立ちふさがる。


「邪魔するんじゃねぇっ!」

「そうはいくかい!」






 酒場にありがちな乱闘劇が始まった。乱れ飛びかう魔法の光。魔力の付加された武器の応酬。さらには誰がやったかGhost(ゴースト)まで召喚されて暴れだす始末。店主は自分の店が壊されるさまに呆然と立ち尽くしている。良いぞ、もっとやれ。






「えいっ!」



 黒戦士の斧の一撃で大きく吹き飛ばされるネコ科獣人。すぐそばの柱にたたきつけられてノックアウト。ずるずると滑り落ちて、床に伏した。ありゃ痛そうだな。


「ご協力感謝する」

「いやなに、お勤めご苦労様です」



 ガードは白黒コンビと互いにねぎらうと、身柄は後で確保するとだけ言い残して立ち去ってしまった。良いのか、それで? ネコ科獣人の様子を見ようと、椅子から立ち上がって確認してみたが、毛深い体毛に覆われていて脈がイマイチ分からんかった。まぁ、まさか死体をそのまま店の中に置いて立ち去るなんて事はしないだろうしな。


「いやあ、久々に見ごたえのある乱闘だったね。あんたもそう思うだろ?」






 赤いローブのネコ娘が気さくに話しかけてきた。見るとこのネコ娘も尻尾を生やしている。ウチがそれを見ていることに気づいたらしい。更に話しかけてきた。


「何だい? いまさらAinmhi(アニャヴィ)が珍しいもんでもないっしょ」

「あにゃ……なんだって?」

「知らないのかい? ああ、アタシはAinmhi(アニャヴィ)のAimy(アイミィ)。Ainmhi(アニャヴィ)ってのは魔法で作られたネコ耳ネコ尻尾の人工生命だよ。もちろん腹にその証もあるよ」



 ネコ耳ネコ尻尾か、えぇなぁ……。Aimy(アイミィ)の話では、Ainmhi(アニャヴィ)はもともと愛玩奴隷用―当然いろんな意味での愛玩用―に作られたものだったが、近年では人権意識の高まりだか何だかで、他の種族と同等の市民権を得ているらしい。

 で、そこに寝転がっているのがKhajiit(カジート)と言われる人種。見ての通りネコ科獣人で、ネコ科らしく、すばしっこい動きが得意で、夜でも目が利くとか。顔の造形はライオンに近いかな。

 あと、さっきのガードやそこの店主はImperial(インペリアル)と言われるヒト族。なんでもヒト族にも種類があるんだとか。ものは試しとウチは何の種族なのかと聞いてみたら、"Chanpon(チャンポン)"だと言われた。ちゃんぽん……変な名前。

 いろいろ教わったついでに、ウチの目的であるテレポートの魔法が無いか聞いてみたが、さすがにそれについては知らないとのこと。でも港に行けば、海を渡ってきた連中がいるから、何か知ってるんじゃないかと教えてくれた。なるほど。明日行ってみよう。

 Aimy(アイミィ)との話を終えると、店内をめちゃくちゃにされて途方にくれている店主に部屋を借りることにした。20ゴールドか。念のためCharm(チャーム)を打ち込んでみたが、宿代は固定料金なんだそうな。1階は酒場、2階が宿部屋という構造になっているので、ウチは階段を上がろうとした。






「ごきげんよう!」



 さっきの白黒コンビと魔法使いとすれ違った。さっきのGhost(ゴースト)はこの魔法使いが召喚したらしい。話を聞こうとしたが先を急いでいたらしく、さっさと店を出てしまった。

 ウチが借りた部屋は2階の手前の部屋。扉を開けると、そこにはなぜか先客が居た。





 2つ並んだベッド。手前がダブルベッドで奥が質の良いシングルベッド。先客はその質の良いシングルに陣取っていた。相部屋なんて聞いてないぞ。

 1階に引き返して店主に問いただすと、貸したのは部屋じゃない、ベッドだと抜かしてきた。そういやそんな言い方をしていたが、相部屋だとは聞いてないと迫ると、食事分はサービスになった。店主からしたら、ウチの宿代も壊れた店の修繕費で消えるんだろう。まぁ雑魚寝には慣れてるから食事のサービスだけで手を打った。





 用意されたのはパンと肉、ラディッシュとトウモロコシ。酒は飲んだ分だけ別料金だそうな。それは良いが……トウモロコシをそのままドンと更に乗っかっている光景ってどうよ。調理された食事は無いのかよ。ぶつぶつ一人で文句を言いながらも、空いた腹にそれらを詰め込んでいく。


「さ、食った食った。あとは寝るべ」






 隣で寝ているDark Elf(ダークエルフ)を横目に、一人じゃ大きいダブルベッドに横になった。この国じゃ寝るときも靴は脱がないのか……。





 ま、いっか。今日はいろんなことがありすぎた。面倒なことは明日考えるとしよう。


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「まったく、イビキがうるさくて寝れやしないよ」



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ひなみこと

Author:ひなみこと
昔:セクハラ騎士
今:セクハラ(される)魔術士

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