2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

15日目 ~白黒、開門、人の杖~



 結局、朝になってもFalcar(ファルカール)は戻らなかった。最初から戻ってくるとは思っていなかったけどな。しかし支部長という立場ある人間なのに、後先考えないであんなことをやってるんだから、プライドだけで中身の無い男だったのかな。

 さて、ここはMages Guild(メイジギルド)から表通りに向かう路地の途中。こんなところにテントを張って何してるんだろうな。冒険者? もしくは家なしのホームレス? まぁウチには関係の無いことだろうけど。


 


 さて、今日は久々に長距離の移動になるな。目的地はImperial City(インペリアル・シティ)の南に位置するBravil(ブラヴィル)という街だ。





 かなり時間がかかりそうな距離なので、今朝は日が昇る前から出立だ。パトロールのガードも、松明を持って巡回している。このあたりは昨日、頑張って掃除した後だけどな。





 Imperial City(インペリアル・シティ)の高い塔が見えてきた。左手には湖だろうか。そしてその奥には橋らしきものも見える。予定では今日はあの橋を渡ることになるのだが、まだ距離があるなぁ。





 おっと、朝っぱらから野盗のお出ましか。このあたりは昨日、斧を振り回していたKhajiit(カジート)が居たところだな。そいつの仲間が生き残っていたのか?





 どちらにしろ、野盗一人じゃ相手にならん。Zombie(ゾンビ)に殴られ、ウチの魔法で焼かれてご臨終だ。





 さて、先を進もうか。そういえば、いつもの杖を準備してなかったな。早速引っ張り出そう……あれ、何か急に天気悪くなってきてね? さっきまではっきり見えていたImperial City(インペリアル・シティ)の姿がかすんできたんだけど……。





 だんだんあたりが暗くなり、しまいにゃ雨まで降ってきた。向こうにはImperial City(インペリアル・シティ)が見えるはずなんだけど……なんとなくしかわからんな。





 やれやれ、最近はいい天気が続いていたのにな。Kvatch(クヴァッチ)を出てからは、雨に降られた記憶が無い……あれ、それってMartin(マーティン)と一緒にいたときだけだな。Martin(マーティン)って晴れ男?





 この近辺は治安がいいので、そんなくだらないことをのんびり考えながら歩く余裕もある。おや、この店は火事にでもあったのかな? 建物が崩れ落ちちゃってるよ。





 今のところ、敵と出会ったのは朝一の野盗一人のみ。いやはや、のんびり旅が出来るってのは良いねぇ。時間のロスもなくてすむし。せっかくだからあのAyleid Well(アイレイドの泉)で休憩していこう。





 うんうん、一休み一休み……と思っていたら、向こうのほうが騒がしい。誰か争っているような雰囲気だ。何だ、せっかく休もうと思っていたのに。





 どうやら白銀の鎧をまとった騎士が、野盗らと戦っていたようだった。せっかくだ、加勢してやろう……ん、なんだあのデカイのは?





 野盗の中に、ひときわ大柄のOrc(オーク)が混じっていた。こいつは強そうだ。良く見ると誰かの犬も一緒になって戦ってるぞ。





 まわりの野盗を先に片付けると、一斉にデカブツに集中攻撃を浴びせる。デカブツは防具がボロボロになりつつも、ハンマーをブンブン振り回していたが、さすがに耐え切れなかったようだ。






「やれやれ、タフな奴だった……って、おおい」



 デカブツを倒すと、騎士たちは回復魔法で自らを癒しながら、急いでその場を後にしてしまった。なんだなんだ、加勢してやったのに礼の一言もなしかよ。






「で、犬の主人は今更お出ましか」



 どうも行商人って連中は、揉め事から逃げたがる傾向があるな。まぁ命あっての商売なんだろうから無理は言わないが。それじゃ早速、こいつらの戦利品でも買い取っていただきますか。





 行商人に戦利品を売りつけると、再び先に進みだした。ようやく橋までたどり着いたな。さっきの騎士たちは、もう姿が見えなくなっている。まぁ雨だから遠くまで見えないってのもあるけれど。





 大河にかかる大橋。かつてImperial City(インペリアル・シティ)で真珠取りをしていたときに見たことがあったな。造形はImperial City(インペリアル・シティ)の西の橋に比べると劣るが、規模はやはりこちらの方が大きそうだ。





 おっと、橋を渡ってると向こうから誰かやってきたぞ。パトロールのガードと……まさか、追い剥ぎ? ガードが真後ろに居るっていうのに、気付いて無いんだろうか? そのままウチの方へやってきた。






「動くんじゃねえ! 死にたくなきゃ、金をよこせ!」



 おいおい、本気かよ。アンタの真後ろでガードが睨んでるぜ?


「おまわりさーん、この人、追い剥ぎですよー!」






 ガードが馬から下りると、剣を抜いて向かってきた。追い剥ぎはそれでもこちらに襲い掛かってきたが……馬鹿め。追い剥ぎの攻撃を杖で上手く防いでると、追い剥ぎの後ろからガードが切りかかった。





 そしてその場に崩れ落ちる追い剥ぎ。獲物を狙うのもいいけど、周りをちゃんと見ないとこういうことになるんだぞ。もっとも、この雨だと遠くまで見通せないのは仕方の無いことではあるが。





 どのぐらい見通せないかというと、この橋の終わりが見えないぐらい。うん、これじゃ仕方ないな。対岸で何かあってもサッパリ分からないぜ。





 ようやく橋を渡り終えると、誰かが弓で戦っているところに出くわした。しかしあいにくの雨で、誰と戦っているのかはここからでは確認できない。もう少し近づいてみるか。





 丘の向こうから、その大きな姿が現れた。どっかで見たことあるな……って。


「Daedroth(ディードロス)!! なんでこんなところに!?」






 わ、馬鹿、こっち来るな! ウチが大声を出したせいで、Daedroth(ディードロス)がこっちに向かってきやがった。慌てて後ずさりすると、さっきの人がDaedroth(ディードロス)の背中に次々と矢を打ち込んでいく。何か知らんが、丁度良い援護になったらしい。Daedroth(ディードロス)は今度はさっきの人へと向かっていく。






「頭悪ぃヤツだな、お前は!」



 今度はウチに背中を向けたので、容赦なく魔法を打ち込ませて頂く。





 最強のDaedra(ディードラ)も、オツムが悪いと大したことなかったな。トドメはDrain Health(ドレイン:体力)で終了。大きな体から力が抜け、ぐにゃりと崩れ落ちた。





 彼女、非番のガードだったらしく、鹿狩りをしていたら突然Daedroth(ディードロス)に出くわしたんだそうだ。鹿狩りも良いが……その格好、何とかならんのか? 突っ込みどころ満載だ。それとも突っ込まれたがりの痴女なんだろうか。あまり関わらないようにしよう。





 しっかし、なんでこんなところにDaedroth(ディードロス)なんかが出てきたんだ? 話じゃ、Daedra(ディードラ)の魔物たちが現れるなんてのはそうそう無いって話らしいが。Kvatch(クヴァッチ)の時のように、Oblivion Gate(オブリビオン・ゲート)から出てくるぐらいじゃないのか? しかしここはKvatch(クヴァッチ)から結構離れているし……ん? 橋の向こうから誰かやってきたな。何か気合入って襲い掛かる気満々みたいだけど……。


「わわっ、Daedroth(ディードロス)!! ……もしかして、アンタがやったのか?」

「ん、そうだけど?」



 黒い鎧の戦士たちは、ウチの横に転がってるDaedroth(ディードロス)に無茶苦茶ビビってる。さっきまでのやる気満々はどこ行った?


「し、失礼しました~」






 なんだ、てっきり野盗みたく襲い掛かってくるかと思いきや、そのまま素通りしていきやがった。ヘタレめ。ウチのZombie(ゾンビ)がさっきの戦士たちを追い回していたが、剣を向けることなくさっさと逃げていった。

 まぁ良いか、無駄に戦わずに済んだということで。





 先を進もう。大きな橋の次は小さな橋だ。このまま西へ行けばまだあるのだが、ウチはこの先の分岐地点で南に曲がるので、他の橋を渡ることは無い。





 おや、橋の右脇に誰か倒れているぞ?





 服装からして野盗のようだな。さっきの戦士たちが倒していったのかな? 一応橋の反対側も見てみよう。






「こいつは……さっきの騎士だな」



 大橋の手前でデカブツOrc(オーク)と戦っていた、白銀の鎧の騎士が倒れていた。状況からして、倒したのはさっきの戦士たちだと思われるが……。しかしもう一人の騎士の姿は見えない。






「ずいぶん良い武器を持ってるのに……もったいない」



 騎士の形見だ。一応預かっておこう。もう一人の騎士がいたはずなので、そいつに会ったら渡しておくか。





 分岐地点に小さな集落を見つけた。さっきの騎士がいないか確認してみたが、ここには立ち寄っていないとのことだった。





 仕方なく道を南に進んでいると……おや、あれはもしかして。





 そこには3つの死体。2人は黒い鎧の戦士。もう1人は白銀の鎧の騎士。しかしこいつはさっきの騎士とは別人だな。さっきの騎士は剣と盾を持っていたが、こいつは弓を持っている。一体何があったんだろうか……一応この騎士の弓も貰っていく。





 何だろう、縄張り争いか何かかな……。さっきのことを考えていたら、目の前に現れた炎の精霊。またDaedra(ディードラ)の魔物か、このあたりはDaedra(ディードラ)の住みかか?





 Zombie(ゾンビ)を召喚して炎の精霊とバトル。Zombie(ゾンビ)は炎に弱いけれども、かといってSkeleton(スケルトン)を召喚しても意味ないしな。……おっと、横からScamp(スカンプ)も参戦。こりゃほんとにDaedra(ディードラ)の住みかっぽいな。





 まず先に炎の精霊を仕留める。





 残ったScamp(スカンプ)を追いかけるZombie(ゾンビ)。あ、魔法食らってる。Scamp(スカンプ)は魔法も使うんだったよな。あのニオイさえなければ、Zombie(ゾンビ)よりも優秀なんだろうけれど……。





 逃げるScamp(スカンプ)、追うZombie(ゾンビ)……え? ちょっと待て。一瞬自分の目を疑ってしまった。あの奥に光り輝いてる門はまさか……Oblivion Gate(オブリビオン・ゲート)!?





 Kvatch(クヴァッチ)では、必死の思いで閉じることに成功したOblivion Gate(オブリビオン・ゲート)。それがこんなところに……さっきのDaedroth(ディードロス)も、あそこから出てきたんだろうかな。





 おお、きたきた。空が朱に染まってきた。Kvatch(クヴァッチ)じゃ、これが起きるたびに敵がわんさか出てきてたな。これ以上敵に襲われる前にさっさとここを抜けるか。なに、Oblivion Gate(オブリビオン・ゲート)を閉じないのかって? こんなところにあるOblivion Gate(オブリビオン・ゲート)じゃ、それほど脅威にもならんだろ。それに、正直メンドイ。





 などと考えていたら……前方に見えるあのシルエット。あれはMinotaur(ミノタウロス)だな。あいつはDaedra(ディードラ)の魔物じゃないらしいけど、厄介な敵であることには代わり無い。しかも街道のど真ん中でウロウロと獲物を探してる。さっきのOblivion Gate(オブリビオン・ゲート)より、こっちのほうが脅威だろ。





 Zombie(ゾンビ)を召喚し、魔法を打ち込む。しかしさすがMinotaur(ミノタウロス)、タフさはDaedroth(ディードロス)に匹敵する。





 もちろん破壊力も伊達じゃない。Zombie(ゾンビ)程度なら3発で成仏させちまう破壊力を持っている。こまめに召喚しなおさないとな。





 突如、Minotaur(ミノタウロス)が走り出した。まさか逃げるのか? と思いきや、ウチの後ろに誰かいたようで、そっちに目標を切り替えたようだった。


「おかげで背後がガラ空きだよ!」



 突進するMinotaur(ミノタウロス)だったが、あっちの誰かさんにたどり着く前に息絶えた。





 誰かさんは、ウチと同じような旅の魔術師だった。召喚して魔法を打ち込む、ウチと同じスタイルの戦い方。ただ召喚しているのがSkeleton(スケルトン)なのが心もとないが。





 彼女はAtla(アトラ)と名乗った。ウチと同じくMages Guild(メイジギルド)の一員で、Bravil(ブラヴィル)に向かう最中だとのこと。





 せっかくだから一緒に行かないかと誘ったのだが、興味ないらしい。一人でさっさと先に行ってしまう。まぁ良い、愛想悪いが行き先は一緒だ。勝手についていこう。






「お、クマだ。どうする?」

「どうするも何も、倒さなきゃ進めないでしょ……って、並んで歩かないでよ」



 まぁまぁ。クマがこちらに気付くと同時に、ウチらは一緒になって召喚する。息ぴったり。





 あえて言うなら、Atla(アトラ)が召喚するのはSkeleton(スケルトン)なので、少々心もとない……それはさっきも言ったか。とにかくSkeleton(スケルトン)とZombie(ゾンビ)で翻弄させてる間に、魔法を打ち込んでハイ終了。






「即席パーティーにしちゃ、息ぴったりだったな」

「勝手にパーティーにしないでくれる? それと、並んで歩かないでよね」






 そして今度は野盗のお出まし。野盗2人に対して、こちらは魔術師2人にお付きが4体。






「はっは、余裕じゃないか」

「お腹に刺さってるのは何なのかしらね」






 引き続き並んで歩いていると、突如Atla(アトラ)がSkeleton(スケルトン)を召喚して、間に割り込ませた。なに、そこまで並んで歩くのがイヤなの?






「と思ったら敵かよ!」



 丁度ウチが居た位置からだと木が邪魔で見えなかっただけだった。思わずZombie(ゾンビ)の召喚より先に魔法を打ち込んでいた。しかしイノシシの目標はAtla(アトラ)に定まっているようで、Skeleton(スケルトン)が追い回してもその目標を変えようとしない。


「どうしてこっちにばかり向かってくるのよ!」







「はいはい、ウチを忘れんな、と」



 Atla(アトラ)のSkeleton(スケルトン)ごとまとめて、イノシシを炎で包み込む。その一撃でようやく息の根が止まったようだ。






「な? 一緒に居たほうが良かっただろ?」

「助けられなくても自分で何とかしたわよ……ほら、Bravil(ブラヴィル)に着いたわよ」



 雨で視界は悪いが、それらしいシルエットが見えてきた。





 狭い吊り橋を渡って、ようやくBravil(ブラヴィル)に到着。太陽が出てないので分かりにくいが、夕方頃だろうな。





 さて、いつものごとくガードに道案内を……。


「Mages Guild(メイジギルド)に行くんでしょ? こっちよ」



 お、ついにツンデレがデレる時が来たか。ガードさん、今回は出番なしです。





 Bravil(ブラヴィル)は今までの街の中ではかなり貧しい建物が並ぶところだった。2階建ての集合住宅が並んでいるが、どれもこれも掘っ立て小屋のような感じだ。まるでスラム街に来たみたいだな。






「ここがMages Guild(メイジギルド)よ、それじゃあね」



 丁度目の前の赤い服のDark Elf(ダークエルフ)が出てきた建物が、Bravil(ブラヴィル)のMages Guild(メイジギルド)だそうだ。他の建物よりは少し立派だが、それでもなんか貧乏臭いな。

 Atla(アトラ)はMages Guild(メイジギルド)に立ち寄らず、橋の向こうの宿屋へ向かっていった。今日はあそこに泊まるようだ。






「ああ、こんにちは。新しくギルドに入った人だね」

「こんちわ。ここの支部長さんは?」

「支部長? 支部長ならそこに座ってるよ」



 緑の服を着たArgonian(アルゴニアン)が座ってる。あれがそうか……。Argonian(アルゴニアン)って見た目だけじゃ男か女か分からないな。彼と呼ぶべきか彼女と呼ぶべきか迷ったので、仕方なく"あれ"って呼んじゃったけど。






「推薦状? ごめんなさいね、残念だけど、いつものような試験をする暇はないの。今はArdaline(アルダリーン)の事が本当に心配で頭が一杯なのよ」



 いきなりの試験受付拒否宣言。おいおい、悩み事があるようだけど、仕事はちゃんとしてくれよ……待てよ。


「そのArdaline(アルダリーン)とやらの問題を解決すれば、推薦状をくれるって事だな」

「まあ。協力してもらえるかしら? もちろん、あなたが良ければだけれど」

「ウチは推薦状さえもらえれば構いやしないよ。で、その悩み事とは?」



 Bravil(ブラヴィル)の支部長、Kud-Ei(クド=アイ)の話によると、ギルド員のArdaline(アルダリーン)という女性が、Varon Vamori(ヴァロン・ヴァモリ)という男にしつこく付きまとわれて迷惑しているとのこと。それだけじゃなく、Ardaline(アルダリーン)の杖を盗んで持ち出してしまったというのだ。何か子供のいたずらみたいな話だな。


「魔術師の杖というのは、実用品というより魔術師のシンボル的なものなのです。しかし、持ち主にとって大切なことに代わりありません。Ardaline(アルダリーン)の杖を取り戻して来てください。それが出来たら推薦状を送りましょう」



 Kud-Ei(クド=アイ)から説得用にとCharm(チャーム)のScroll(スクロール)を受け取った。説得用ね……。ウチなら、シラを切るようだったら力ずくでも喋らせるけれどもな。しかし今回は穏便にやりますか。


「彼に白状させるのに必要なものは渡しました。いつものやり方とは違うけれど、ここの娘たちのためなら何だってやりますとも」



 なるほど、ここの支部長は百合疑惑が……いやいや、なんでもないなんでもない。若い魔術師の母親的存在ってわけだろ? まぁ過保護すぎるかもしれんが、そのあたりはウチが口出すところじゃねぇな。

 さて、それじゃ早速そのVaron Vamori(ヴァロン・ヴァモリ)とかいうナンパ男に話をつけてくるか。……って、Varon Vamori(ヴァロン・ヴァモリ)の特徴を聞いてなかったな。






「どうかしたの?」



 おお、さっきの可愛い女の子。うんうん、こういう可愛い女の子が居たら、ウチも過保護になってしまってもおかしくない……って、そうじゃなくて。

 ウチはこの子――Meril(メリル)にVaron Vamori(ヴァロン・ヴァモリ)について聞いてみた。うんうん、そいつがサイテーのクズ野郎ってのは知ってるから、見た目の特徴とかさ。






「なんだ、さっき見かけた赤い服のDark Elf(ダークエルフ)じゃねぇか」



 丁度ウチと入れ違いになったのだが、どうやら今日も懲りずにArdaline(アルダリーン)に言い寄っていたらしい。人の杖を盗んでおいて、よく堂々とそんな行動が取れるもんだな。

 どうやらすでにこのあたりには居ないようだ。向こうで談笑している連中に聞いてみると、教会の方に向かったとの事。泥棒が神頼みかよ。





 教会はMages Guild(メイジギルド)のすぐ隣にある。気付けばずっと降っていた雨もすっかり止んで、晴れ間が広がっていた。もう少し早く晴れてほしかったなぁ。






「さて、と。結構人が居るな」



 街の人も居れば旅の戦士も居る。さて、赤い服赤い服……お、居た居た。神頼みも終わって帰ろうとしていたVaron Vamori(ヴァロン・ヴァモリ)を見つけて話しかける。


「何かご用ですか?」

「Ardaline(アルダリーン)のことなんだけど……分かってるよな?」



 シラを切るようだったら実力行使に移るぞ。あ、力ずくという意味ではなくCharm(チャーム)の魔法でという意味でな。





 しかし残念ながら……いや、都合よくVaron Vamori(ヴァロン・ヴァモリ)はベラベラ喋りだした。いやあ、誠心誠意込めて話せば分かってくれる良いヤツじゃないか。なあ? 構ってほしくてちょっかい出してただけなんだろ? うんうん。で、彼女の杖は?


「そうか、白状するよ。それを持ち去ったのは私だ。私は……私は何を考えていたんだろう」



 続けて、彼女が話を聞いてくれないとか、無視されるとかイロイロ言っていた気もするが、そういう関係ないのはいいからさ。さっさと返せよ、杖。


「実はもう杖は私のところに無いんだ」

「はぁ?」

「う……売ってしまったんだ、Soris Arenim(ソリス・アレニム)に」

はぁ!?

「そ、そんな怖い顔をしないでくれ……彼はImperial City(インペリアル・シティ)のTalos Plaza District(タロス広場地区)に住んでいる」

はあぁ!!?



 いかん、これ以上このサイテーのゲス野郎とツラを合わせていたら、いつの間にか殴り倒してましたなんて展開になりかねん。構ってほしくて杖を盗んだのはいいけど、後になってどうしようどうしようと悩んだ挙句、友達に売り払っただと!? 周りに人が居なけりゃ、2、3発は間違いなく殴り飛ばしていたところだったな。






「Ardaline(アルダリーン)に済まなかったと伝えてくれ」

「ウッセ、ボケ、殺すぞ!」



 ウチがいよいよ杖を構えて振りかぶると、Varon Vamori(ヴァロン・ヴァモリ)は一目散に逃げ出していった。一瞬でも良いヤツだと思ったウチが馬鹿だった。最低最悪のうんこ野郎だ、うんこだうんこ。





 さて、そろそろ冷静になろうか。ここにはもう一人話さなきゃならないヤツが居るんだ。いや、見つけたというべきか。暗くて風景に紛れそうだが、あの鎧には見覚えがある。


「ちょっといいかい?」






「うん? ああ、君は道中手助けしてくれた方だね。あの時は急いでいたもので礼も言わず、失礼をした」



 白銀の鎧の騎士。道中、デカブツOrc(オーク)と戦っていた騎士だ。彼に渡さなければならないものがある。






「こ、これは……君! 一体これをどこで見つけたんだ!?」



 やはり見覚えがあったようだ。剣は橋のそばで倒れていた赤毛騎士の。弓はその先の道端で倒れていた弓騎士の物だ。


「我々はWhite Crusaders(ホワイト・クルセイダーズ)。ここ、Bravil(ブラヴィル)に来る途中、Blackwood Company(ブラックウッド・カンパニー)のならず者に襲われ、散り散りになってしまった」

「Blackwood Company(ブラックウッド・カンパニー)?」

「黒い鎧に身を包んで、最近Fighter's Guild(戦士ギルド)と敵対している連中だ」



 黒い鎧……ああ、あいつらか。丁度ウチがDaedroth(ディードロス)とやり合っていた頃、彼らと連中もまたやり合っていたというわけか。その後、騎士たちを倒したBlackwood Company(ブラックウッド・カンパニー)の連中が、Daedroth(ディードロス)を倒し終えたウチとすれ違ったってところだな。





 Blackwood Company(ブラックウッド・カンパニー)へ報復を誓う騎士に彼らの形見を渡すと、ウチは教会を後にしてMages Guild(メイジギルド)に戻った。いずれ彼らは白黒ハッキリ決着をつける時が来るんだろうな。





 話はついたぜ。ただ、余計に厄介な話になっちまったけどな。






「売ってしまった? ますます面倒なことになりましたね。杖が今どこにあるか言ってませんでしたか?」

「Imperial City(インペリアル・シティ)の友人の手元にあるんだってさ」

「わかりました。これを持っていって、事態を収拾してください。もちろん、この件は私とあなただけの話よ」



 そう言ってKud-Ei(クド=アイ)は、更にScroll(スクロール)を3枚追加してきた。うーん、さっき使わなかったから、これで手元に4枚あるわけだ。本当に使うなら、ウチには1枚だけあれば良いんだが……ま、いっか。





 さて、次はImperial City(インペリアル・シティ)か。今日はもう遅いので出立は明日にするとして、道のりを確認しておこう。とはいっても、途中の集落までは今日通った道だ。道中Oblivion Gate(オブリビオン・ゲート)があるのが気になるが……とにかくその集落まで行った後は、そこから西へ進み橋を2つ渡り、湖沿いに北上してワインの宿屋を通ってImperial City(インペリアル・シティ)の橋を渡る、と。

 Imperial City(インペリアル・シティ)で何とかして杖を取り返した後は、同じ道を通ってBravil(ブラヴィル)まで戻ってくる。こりゃ往復だけで1日かかりそうだな。





 そうと決まれば準備にとりかかるか。まずはポーションの補充からだ。






「私はArdaline(アルダリーン)。ここBravil(ブラヴィル)のギルドではAlchemy(錬金術)の上級トレーナーをやっております」



 おや、彼女が話題のArdaline(アルダリーン)。へー、ウチはどっちかってぇとMeril(メリル)の方が可愛いと思う……じゃなくって。

 とにかくポーションを購入したあと、少々世間話を。チラッとVaron Vamori(ヴァロン・ヴァモリ)の話題を出した途端、彼女の眉間に深いシワが……こりゃ相当嫌われてるな。





 ポーションの補充は終わった。後は貴重品の保管だな。ギルドを出て橋を渡った先にある宿屋へ向かった。






「こんにちは。あら」

「おいっす」



 Atla(アトラ)がこの宿にいるのは聞いていたが、入ってすぐ再会するとは思わなかったな。軽く世間話をしたあと、今日の宿を取ろうか。





 何とも愛嬌のある店主に話して、ベッドを借りることにした。部屋は3階か。しかしこのボロ家で3階建てって、嵐が来たら壊れそうな気もするのだが。






「お、あったあった」



 以前Martin(マーティン)が言っていた、魔法の宝箱。Martin(マーティン)いわく、やろうとすればどこの宿屋にでも置けるというので、無理言って本当に全部の宿屋に置くよう頼んでおいた。まさか本当にやるとは思っていなかったが。さて、この魔法の宝箱。入り口は各所にあるが、中身はどこに行っても全て同じ。いわゆる保管庫というヤツだな、こいつは。さて、それじゃ早速荷物の整理といきますか。





 荷物の整理を終わらせた後は下に戻って今日の晩飯。安宿なので大した食事は出ないが、どこかの街みたく井戸に死体があるとかじゃなけりゃ何だって良いさ。とはいっても、この街も衛生状態はあまり良いとは言えないところだけれども、この程度ならウチは気にならない。






「食った食った、おやすみー」




コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ひなみこと

Author:ひなみこと
昔:セクハラ騎士
今:セクハラ(される)魔術士

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセス数(5/30設置)
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR